第8回神道セミナー「道教と日本文化」

8-1第8回神道セミナー「道教と日本文化」が平成16年3月13日、埼玉県秩父市の秩父神社で開催されました。参加者は、国内外の研究者や神職、一般の人々などおよそ300人で、神社への正式参拝に続いて同神社会館での講演を熱心に聴講しました。
基調講話は以下の4人で、アラン・グラパール・米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校東洋学部教授がコメンテーターを、薗田稔・秩父神社宮司・京都大学名誉教授(ISF常任理事)が総括を務めました。

開会として、中西旭ISF会長による主催者挨拶、深見東州副会長の「神道の真価値をひろく世界の人々に知っていただき、混迷する世界に平和と福利をもたらす一助となるように、努力を重ねていく所存です」とのメッセージが代読されました。

「海をわたった道教の神々」 王勇・中国浙江大学日本文化研究所長・教授

  8-2 基調講話の王教授は、海を渡って日本で信仰された道教の神として「鐘馗」を例にあげ、日本の風土に合わせて性質や形を変化させた姿をスライドを使って紹介し「神様は神通力と自由自在さで海を渡り、人間以上に文化を伝えている」、さらに「広く東アジア全体を視野に入れて道教の神を研究すれば面白い」と語りました。

「日本の神社仏閣に見られる道教の要素」 河野訓・皇學館大學文学部神道学科助教授

   8-3続いて、河野助教授は、道教の社寺に与えた影響について各側面から解説しました。「中国から流入した宗教思想すべてが道教のものではない。また仏教も中国である程度、道教化されていたはず」と指摘。そして、日本で見られる道教の要素として「お札」と妙見信仰に着目し、吉田神道・霊符印と太上玄霊北斗本命延生真経・宝章の極似性を示しました。

「神道と陰陽道―江戸時代から今日まで―」 林淳・愛知学院大学文学部宗教学科教授

8-4 陰陽道を講義した林教授は「陰陽道とは何かを問うこと自体難しい。メディアイメージと研究領域でギャップがある」と切り出し、「陰陽道は〝メイド・イン・ジャパン〟。陰陽道という言葉自体が中国には無く、中国の歴史に当てはめるのはかなり強引」と、陰陽道の日本での成立と展開を概説しました。

日本における外来宗教受容の特色」平川祐弘・東京大学名誉教授・大手前大学教授

8-5   最後に立った平川教授は、日本における外来文化や外来宗教の受容の特色について、日本人の受容の態度と説明し、また、文化の交流は対等ではなく一方的であったこと、他宗教との接触で自宗教の自覚や再定義が進んだこと、仏教と既存の神道が共存する道を選んだこと、などを付け加えました。

総括

8-6   コメンテーターのグラパール教授は、外来神が日本で性格を変えることは興味ある問題だとし、日本に道教が存在したというのは誤りで、日本の宗教に大きな影響を及ぼしたとまでは言えない、とまとめました。
最後に総括に立った薗田宮司は、「樹木の根を神道に当てはめ、幹や枝葉を外来宗教に喩えて日本の宗教文化を説明する人があるとおり、それぞれの宗教が全体を活かすものとしてずっと来ている。縄8-7文、弥生の時代から大陸との交流があるわけだから、日本にしかないものを期待しないほうがいい」「要素主義で一つの宗教を切っても意味は無い。組み合わせで、日本の歴史風土の中で育て上げた日本的な形――そこにポイントがあるというくらいの緩やかでオープンな気持ちが大切だ」などと神道研究における態度の在りようを主張しました。

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