第14回「神道セミナー」が2月28日午後、茨城県鹿嶋市で開催された。年一回、全国各地を会場に開く公開講座。今年のテーマは「神道と武士道」で、「剣聖」とうたわれる塚原卜伝ゆかりの鹿島神宮を主会場とした開催となった。あいにくの雨模様だったが、約150人が参加し、剣術古武道の一大流派「鹿島新當流」による奉納演武や講話、パネルセッションを熱心に参観・聴講した。うち「剣聖塚原卜伝顕彰と奉納演武」では鹿島新當流の第六十五代宗家、吉川常隆氏が関東武術や同流の解説を行ない、門下が実演を披露した。続く基調講話では、菅野覚明理事(東京大学大学院教授)が「武士道、自然、神道」と題して話した。パネルセッションでは、ジョン・ブリーン理事(国際日本文化研究センター准教授)をモデレーターに、アレキサンダー・ベネット理事(関西大学准教授)、ムケンゲシャイ・マタタ理事(オリエンス宗教研究所所長)、菅野理事がパネリストとなって武道実践と武士道研究の視点から発言を行なった。総合コメントは岩澤知子理事(麗澤大学准教授)が担当した。総合司会は梅田善美理事長。途中、国会議員などからの祝電も披露された。 鹿島新當流が奉納演武を披露 セミナー開始にあたり、本会役員や関係者、参加者らは鹿島神宮を正式参拝した。 続いて同神宮武徳殿に移り、鹿島新當流による奉納演武を参観した。演武にあたり、同流の概要を説明した宗家の吉川氏は、鹿島の剣が古代に由来し、中世には「鹿島七流」といわれるほど隆盛を極めたとした。とくに塚原卜伝は修練とともに鹿島神宮に千日の参籠祈願をして神示を受けたが、以来、流派は鹿島新當流となり卜部吉川家に継承された。同氏はその精神について、「人の和、平和の世を作る。その精神論が合わさったものと考える。強さをむやみに表に出さないところに、後世の人が剣聖と呼んだゆえんがある」と話した。そして門下による「面ノ太刀」「中極意霞ノ太刀」「高上奥位十箇ノ太刀」などの演武に解説を加えていった。 ◇  ◇  ◇ この後、会場を同神宮前の新仲家ホールに移し、講話とパネルセッションが行なわれた。 開会にあたり同神宮宮司の鹿島則良氏が歓迎の挨拶をし、国づくりに当たった祭神・武甕槌大神について説くとともに、一日は東国・鹿島から始まるとし、「鹿島は武の神様であると同時に民間の信仰も篤かった。私たちに幸せをもたらすミロクの船が鹿島に着くともいわれる」などと語った。 日本人の自然観、自己了解――武士の表芸にも神・自然との関係が 基調講演で菅野理事 基調講演の菅野理事は、自然との関わりのなかから日本人が身につけてきた神道や武士の精神について論及した。人間は生活において意識的に自然に働きかけ、自然と物質交換をしているとし、和辻哲郎の『風土』を採り上げながら、モンスーン型にあってしかも日本的な特徴をみせる自然観や自己了解の仕方を解き明かした。そして、「日本の神様は自然神。神様と人間の関係があり、自然との間に関係するところに神道がある」と話し、武士の表芸も原型からみれば神に関係しており、自然に承認され神仏に交流することが目指されたと解説した。 パネルセッション 「武道精神は活かしてこそ生きる」 ベネット理事 「『武士道』の真意を理解すべき」 マタタ理事 パネルセッションではまず、ベネット理事が剣道の型を実際に示しながら、武士道や武道にある精神、殺傷から人を生かす技へという武道の変遷、そこに底流する緊張感などを説き、「武士道精神、武道文化に自己満足しているきらいがある。強さ、優しさが武道の中には生きているはずで、その精神を実際のものとして実行しなければいけない」と語った。 続いてマタタ理事は、新渡戸稲造が『武士道』を書いた背景や真意を探り、「精神的な混乱状況のなかで新渡戸は、和魂洋才など新たな文明を生まれさすことを考えていたに違いない」と話した。そして、一般に言われる「日本の心」「日本の文化」と新渡戸の思考のあいだにあるズレを指摘し、「武士道」の正しい理解が必要だと問題提起した。 菅野理事は基調講演を補足するかたちで、武道のいう武勇や強さの本意を示唆し、人間が生きるなかで必要とされるものとした。 「日本人の精神に響き渡る価値を追求したい」 総合コメントで岩澤理事 セッション後には吉川氏も加わった講師陣が会場からの質疑に答えた。 プログラムの最後、総合コメントを行なった岩澤理事は、講演とセッションでは武道の原型にある日本人の観念に始まり、武道の歴史や変遷、そして思考の抽象的な進化までが論じられたとし、そのうえで、女性の立場から見て、日本的なるものや男性的なるものを越えていく課題的な要素にも触れ、「精神の底に響き渡るものの価値を追求していきたい。日本人としての存在を徹底し、究めることにより、世界に共通するものを見出すことが大事ではないか」とまとめた。 スカパー放映予定 このセミナーも模様がスカパーにて放映決定。 216チャンネル「精神文化の時間」 4月25日(日)21:30~22:30 4月29日(木)21:30~22:30 放映された映像は、DVDとして講演録とともに神道国際学会の会員には後日、無料配布される。 出講者の簡単なご紹介 吉川常隆師 鹿島新當流宗家に生まれた。幼時から斯道の研鑽に励み、第六十五代宗家を継いで、當流指導に精進されている。 菅野覚明氏 専攻は倫理学・日本倫理思想史。『神道の逆襲』(講談社現代新書・サントリー学芸賞受賞)、『武士道の逆襲』(講談社現代新書)の名著がある。神道国際学会理事。 ジョン・ブリーン氏 英国ロンドン大学SOASで日本学科長を務め、平成20年から現職。神道や日本近現代史の研究で多くの論文や著書を発表している。古武道の研鑽にも励む。神道国際学会理事。 飯田清春師 学生時代から合気道の研鑽に励み、(財)合気会の理事を務める。全国一宮会会長。神道国際学会理事。 アレキサンダー・ベネット氏 ニュージーランド出身で、国際剣道大会の同国チームの主将を務めた。京都大学で武士道をテーマに博士号を取得。神道国際学会理事。 ムケンゲシャイ・マタタ師 …

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平成21年 2月22日、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮・直会殿にて第13回神道セミナーが開催された。後援は鶴岡八幡宮、同宮崇敬団体の槐の会が協賛。約250人が参加した。今回のテーマは「外国人研究者が語るお伊勢さん」。第62回「式年遷宮」が進むなか、伊勢信仰に焦点を当てるとともに、神道研究の国内外を超えたネットワーク化という本会目的に沿って、海外研究者に講師を務めてもらった。 プレゼンターはアレキサンダー・ベネット氏(大阪体育大学講師、本会理事)。講話は4題で、ヘィヴンズ・ノルマン氏(國學院大学神道文化学部准教授)が「斎宮とその世相」、マーク・テーウェン氏(ノルウェー・オスロ大学日本学科教授、本会理事)が「院政期の伊勢神宮」、劉琳琳氏(中国・北京大学外国語学院日本語言文化系専任講師)が「江戸時代庶民の伊勢信仰」、ジョン・ブリーン氏(国際日本文化研究センター准教授、本会理事)が「神宮大麻の近代史」と題してそれぞれ話した。総括はマイケル・パイ氏(ドイツ・マールブルク大学名誉教授、本会理事)。総合司会は本会の梅田善美理事長。 開会に当たって本会の薗田稔会長(京都大学名誉教授)は「今日は素晴らしい日和に恵まれ、心豊かに会場にきていただいたものと思う。神道や伊勢に関する歴史的な実態を改めて心で受け止め、伊勢を考えていただく機会としていただければ」と挨拶。また吉田茂穂氏(鶴岡八幡宮宮司)は「日本人は一直線に進歩に向かう歴史観ではなく、ものの行方、由緒を考え合わせながら、ものごとを進めてきた。まとめ、集約し、研ぎ澄ませていったのが神宮の遷宮。そこには時代の息吹が込められている。古代、神祭りをした原点に戻り、先に進め、繰り返してきた遷宮を含め、どういうふうに説いてくださるか、楽しみにしている」と歓迎の辞を述べた。 斎王を奉ることで 天皇自らも神に ―― ヘィヴンズ氏  発生の実態把握が難しい斎宮・斎王制について、その意味や起源を探ったヘィヴンズ氏は、「伝承というものは、後の歴史的事実、認識を示していることもある」と述べたうえで、宮殿にあった大王の祖神が崇神王朝の代に外へと祀られたとき、豊鋤入姫、倭姫がそれに従ったとの伝承を念頭に、「そのような歴史的認識から起こってきたことはありえる」と推測した。地方豪族、律令制定後は郡司が一族の女性を皇室に奉る采女制度についても、そこには巫女としての宗教性があったという説を紹介し、「天皇の場合、奉るにも上位者はいないから伊勢の神に斎王を奉った。これによって神との血縁関係を作ることで自らを神として権威づけた」と話し、時代とともに意味の変化はあっても、それぞれに関連性のあることを示唆した。 どの時代とも異なる 中世のアマテラス ―― テーウェン氏  新しい支持層を開拓していく必要性に迫られた院政期の神宮に関して、新たなアマテラス像の登場があったことを指摘したテーウェン氏は、12世紀の『天照大神儀軌』、鎌倉後期の『鼻帰書』を取り上げ、広く人々の心を掴むための複合体としてのアマテラスを紹介した。十一王子、荒霊としての閻羅王、さらには泰山府君祭に役割を果たす神々なども盛り込んだアマテラスの新解釈が行なわれたとした。また、天道や冥道がテーマとして浮上したこと、僧侶の宝志が伊勢は大慈大悲であり浄・不浄を選ばないと主張したこと、大日如来や観音菩薩、薬師如来とも関連付けられたことなどを付け加え、「『儀軌』に出てくる神は死者を裁いて人々を往生させる神である」「『鼻帰書』では、渡会家行の語るところを通して神宮の神職は理論とは別に一般の人々に対して閻羅王を登場させた」と話し、「閻魔の宮殿としての伊勢があり、みんな死んだら伊勢に行き、裁かれる。『だから生きているうちに伊勢にコネを作ったほうがいいよ』と諭したようなもの」と説明した。そして、「浄・不浄も、穢れも顧みない中世の伊勢は古代とも近世・近代とも異質な伊勢である」とまとめた。 一般庶民と思想家たる庶民それぞれの意識 ―― 劉氏  近世庶民の伊勢信仰、その行動の実態に焦点を当てた劉氏は、三河の豊田藩内の神明社を取り上げ、伊勢信仰の地域における拠点たる神明社への奉納行動について解説した。また、同じ庶民でも「羽田野敬雄や石田梅岩など史料の書き手としての庶民」と「記録を残さなかった、逆に描かれた庶民」に分かれるとし、「一般庶民は現世利益を求めたのに対し、いわば思想家としての庶民は、天照大神の末裔としての日本人という意識があり、国家意識があった」と論じた。 神国日本の原点としての 天皇、神宮 ―― ブリーン氏  神宮大麻をどう捉えるかを追求することで現代の神道の姿を浮き彫りにすることを試みたブリーン氏は、「神社本庁が神宮を本宗とするのは、皇孫の祖たる天照を祀るからにほかならない。天皇、神宮こそは日本人の回帰する原点であり、それこそが神国日本を復帰するときに目指すところだ」と指摘。戦後が第二次大戦前と異なるのは宗教法人として国家との関係がとりあえずないことだが、首相が正月に伊勢を参拝するなど国家と伊勢の関係は再びある程度、実現していると強調した。そして「神宮大麻が神聖なる御徴、単なる象徴でないことは確かだ。京都府神社庁が大麻頒布増の戦略として神宮大麻を自然の神と捉えたことは本庁が必ずしも好むところではない」と述べた。そして「神道=自然・環境とする欧米人や神職はいるが、本庁が二十一世紀に目指すところとは何の関係もないことは確か。神国日本が何を意味するのか、中身が問われるところだ」と提起した。 総括    講話をうけた総括でパイ氏は、1)古代では政治と宗教が必ずしも区別されなかったと考えられる 2)普遍性のある神が変化するときは、神への普遍的ニーズにも変化が起こっている 3)伊勢参拝の近世的な興隆は民間の信仰の隆盛と無関係ではない 4)簡単に戦前に戻れるものではないことは神道指導者も認識しているはず――など、学術的な討議における留意を述べ、プレゼンターのベネット氏も「過去から現在へ、そして未来への伊勢のあり方まで聞かせてもらえたと思う」とまとめた。 出講者の簡単なご紹介 「神宮大麻の近代史」 ジョン・ブリーン氏 (国際日本文化研究センター准教授) 「院政期の伊勢神宮」 マーク・テーウェン氏(ノルウェー国オスロ大学日本学科教授) 「斎宮とその世相」 ノルマン・ヘイヴンズ氏(國學院大学神道文化学部准教授) 「江戸時代庶民の伊勢信仰」 劉琳琳氏(中国北京大学外国語学院日本語言文化系専任講師) 総括 マイケル・パイ氏(ドイツ国マールブルク大学名誉教授) このページのトップへ

 神道国際学会は2月24日、第12回「神道セミナー」を神戸市東灘区の甲南大学甲友会館で開いた。会場を各地に移して年一回、神道を軸に多彩なテーマで催す公開講座。今回のテーマは「映像で見るお地蔵さんと地域社会~民間信仰共同研究会七年の歩みから~」。本学会の研究助成で活動してきた民間信仰共同研究会による成果報告の意味も含めての開催となった。共催は会場提供などで尽力いただいた甲南大学コミュニティー・デザイン・センター(CDC)。〝六甲おろし〟に小雪の混じる肌寒い一日だったが、当日参加も含めて多くの参加者が来場した。   開会にあたり共催の平松闊・甲南大学文学部教授(CDC代表)は「CDCは地域に密着して活動していきたいと考えている。その意味で今回はよい機会を与えてもらった。施設も存分にご利用いただければと思う」と歓迎の挨拶。これを受けて薗田本会会長も「お力添えをいただき、また、CDCとともに開催できることは大変にありがたいことと思っている」と挨拶した。また、衆議院議員の松本純・自民党副幹事長からの祝電が披露された。 関西に息づくお地蔵さんと地蔵盆     トピック1では、民間信仰共同研究会のまとめ役である森田氏が、同研究会代表だった故・米山俊直氏(本会副会長、京都大学教授など歴任)の思い出とともに、研究会の活動を紹介した。そして、「お地蔵さんに対するイメージは人々の心のあり方を反映している」と話し、地蔵信仰の地域的、時代的な多様性と移り変わりを、人々の意識や地域社会の変化と関連させながら考察した。 神谷氏(トピック2)は阪神淡路大震災の犠牲者供養を地蔵に託する人々の姿を見たことを機に地蔵盆を撮り始めたと話し、地元・京都でも地区ごとに多様なその姿を紹介した。長尾氏(トピック3)は彩色の化粧地蔵、化粧なしの〝すっぴん地蔵〟など多彩な姿をみせる地蔵の魅力を語り、「地域ごとに素直な信仰のかたちが表されている。地蔵を知ることは町を知ること。町を知ることは人を知ること」と力説した。 鈴木氏(トピック4)は神戸市東灘区西青木地区の地蔵盆をビデオで紹介し、婦人らによる西国三十三所札所の御詠歌に合わせて子どもたちが輪になって長い数珠をくくっていく数珠回し、安置された地蔵と地蔵盆の世話を続ける人々の姿などを浮き彫りにし、京阪神の地蔵盆は「お年寄りと子供たちが一緒になる、いわばコミュニティーの潤滑油になっている」「お地蔵さんと人々との距離の近さが特徴的」と説明した。 福持氏(トピック5)は滋賀県の琵琶湖湖東地域の地蔵盆をスライドで解説。ムラの地蔵盆とともに地縁によるクミのもの、イエで祀るものなどが層をなしてあることを示し、その形態は、同地域で盛んな浄土真宗の報恩講が本山、末寺、門徒家で営まれる重層性を持っていることから、真宗の基盤を背景としたものと推察した。大森氏(トピック6)は、神職が社殿で祈祷をし、同時に僧侶が地蔵堂で法要を営むという長野県・戸隠神社宝光社の特徴的な地蔵盆を記録した映像作品を披露。神仏習合の江戸時代に同神社で一部追放された僧侶を祀るためというゆえんのあることを説明し、地蔵盆が死者供養の行事であることとの関連を指摘した。 共同体における地蔵盆の意義を探るディスカッション    パネルディスカッション(第三部)では、三宅氏は「地蔵盆の姿も構造も年々変わっていくが、地域共同体のバックボーンとなる精神はつながっていると信じたい。地蔵盆が、かろうじて残っている〝顔見知り共同体〟をなんとか確保する装置であり続けることを願っている」、パイ氏は「地蔵盆は、子どもと大人、仏教と神道、地域の人々のつながりなど、様々な要素が交わっていて、原始的宗教の名残のある宗教行事と感じさせる」、薗田氏は「日本宗教の特徴は、個人信仰に囚われない共同体ならではの宗教的営みだ。地蔵盆も共同体の選びの一つであり、共同体に採りこんだという歴史があるのではないか」と、それぞれの見解を述べた。 ディスカッション中には質疑応答もあり、疫病予防の道饗祭とのつながり、五百羅漢など石仏との関係、地蔵信仰の歴史、化粧地蔵の発生と化粧の材料、地蔵の赤い前掛けや化粧の意味、大日如来と地蔵の誤認と庶民感情など、さまざまな質問や感想が来場者から出された。 最後に司会の村瀬氏はまとめとして、「現在の世界では〝文明の衝突〟がいわれているが、地蔵盆には、みな一緒というような、他者の立場を認めるような日本の宗教文化としての特徴があるのではないかと感じさせられた」と話した。    閉会にあたり総合司会の梅田氏は、「意義あるセミナーを開催できたのも、甲南大学ほか関係者、お手伝いいただいた学生さんたちのご協力によるもので、心より御礼申し上げたい」と謝意を表し、また参加者の顔ぶれにはロシア、アメリカ、中国、英国などの日本研究者がみられ、国際性豊かな会合となったことを紹介した。 なお、エントランスホールには、長尾氏による大阪・野田のお地蔵さん「ななとこまいり」のパンフレットや、研究会の「甲南大学周辺のお地蔵さん調べ」と題した手書きの分布図や地蔵の写真、神谷氏の京都の地蔵盆の写真などが数多く展示され、来場者は興味深く見入っていた。 プログラム 第一部【地蔵と地域社会を考える】 トピック1「地蔵を通して地域社会の変化を探求する/民間信仰共同研究会の歩みとテーマ設定の趣旨について」森田三郎(甲南大学文学部教授)、トピック2「スライドショー/京都の地蔵盆を撮り続けて」神谷潔、トピック3「化粧地蔵を考える~京都と小浜」長尾智子(DNPメディアクリエイト関西、地蔵愛好家)。 第二部【地蔵盆行事を考える―ビデオ作品とスライドを中心に―】 トピック4「京阪神の地蔵盆」鈴木岳海(立命館大学映像学部専任講師)および森田三郎、トピック5「湖東のお地蔵さんと地蔵盆…イエ地蔵・クミ地蔵・ムラ地蔵」福持昌之(滋賀県愛荘町愛知川観光協会事務局長)、トピック6「戸隠神社の地蔵盆~神も仏も…」大森康宏(立命館大学映像学部長)および鈴木岳海。 第三部【パネルディスカッション「地蔵盆と共同体の宗教文化を考える」】 司会=村瀬智(大手前大学メディア・芸術学部教授)、コメンテーター=薗田稔(本会会長、京都大学名誉教授、秩父神社宮司)、マイケル・パイ(本会理事、マールブルク大学名誉教授、大谷大学客員教授)、三宅善信(本会常任理事、金光教泉尾教会総長、大阪医科大学非常勤講師)。 総合司会は梅田善美(本会理事長)。 このページのトップへ

第11回神道セミナー「祭りと遊び、そして神事芸能」が2月25日、東京都千代田区の紀尾井小ホールで開催された。神事・祭礼における遊び、芸能の重要性について考察した。神楽の代表格の一つ、岩手県の早池峰神楽(国指定重要民俗文化財)から「岳神楽」が上演され、イスラエル国テルアヴィヴ大学準教授のイリット・アヴェルブッフ氏が「私が早池峰岳神楽に魅了されたわけ」と題して講話を行なった。また、三重県四日市市の「鯨船神事」のDVD上映では國學院大学助教授の茂木栄氏(本会理事)が解説した。さらに京都大学名誉教授で秩父神社宮司の薗田稔氏(本会会長)が「祭りと遊び、そして神事芸能の意義」と題して基調講話を行なった。午前の部と午後の部の2回で延べ450人が参加した。 早池峰岳神楽が伝える演目は約40番あるが、今回は「鶏舞」「三番叟の舞」「天降りの舞」「権現舞」の計4番が上演された。テンポがよく、男性的で激しい動きが特徴の岳神楽に、参加者は身を乗り出して盛んな拍手を送っていた。 「本物の神楽――呪術的なパワーが私を魅了する」 アヴェルブッフ氏 「修験道研究で日本に来たとき、勧めもあって岳神楽の正月の舞初めを見に行った。そしてその夜、私は神楽と恋に落ちました」と笑わせて講話を始めたアヴェルブッフ氏は、弟子入りして本格的に岳神楽を習い、舞手もつとめた経験を含めて、岳神楽の特性と魅力を語った。 「岳神楽の魅力の元は、何といってもこれが本物であること」と強調し、呪術力を秘めた山伏儀礼の特徴や、構造・振り付けに見られるシャーマニスティクな要素など、神楽一般に見うけられる性格が岳神楽には明確に現れているとした。日中に演じる正式な表舞と、略式で夜に舞われる裏舞が存在する式舞、ゆったりとしたペースと速いペースの組み合わせなど、二部構造にも着目。刀には真剣を使うといったパワーの演出などにも触れた。 そして、「呪術的に優れた刺激的な舞。舞手から放射されたエネルギーが直接的に伝わってくる。岩手の冬の寒さの中でも、舞が始まったときからエネルギーの波を感じ、汗が出てきた」と当初からの感覚を語ったうえで、「舞の技能、呪術力の象徴、儀礼構造、神様の顕現……。舞そのものの中でそれらが混合し、そのパワーに私は魅了されたのです」と打ち明けた。 「祭りと遊びの力が公害訴訟での団結力にも」 茂木栄氏 DVDの上映では、三重県北勢地方に伝わる鯨船神事のうち、一度解散しながら昭和62年に、23年ぶりに復活を果たした四日市市磯津・塩崎神社の同神事が紹介された。解説の茂木氏は、江戸時代の捕鯨の様子を儀礼的に再現する鯨船神事を説明するとともに、復活した祭りの最後で涙を見せた保存会青年部の若者たちの気持ちの背景に迫った。 そこには石油化学コンビナートの町、四日市市の公害訴訟で大企業を相手に勝訴して、全国各地の公害闘争と公害克服に先鞭をつけた漁村・磯津の人々の団結があったとし、「祭りが村の団結力を支えたという意味で、〝遊び〟の持っている大きな力を、ここ磯津の神事に見てとれる」と話した。 「遊びという捉え方が根源的な文化の源」薗田稔氏 基調講演で冒頭、薗田氏は神道国際学会の活動と理念を会長の立場から紹介した。 続いて日本人の宗教観念について、西欧の宗教概念では説明できない、古代から育て継承してきた生活文化の営みとして捉えるよう理解を促した。 またテーマである「遊び」については、祭祀に関わって古くから使われた言葉だとして、霊魂の慰撫、魂鎮めや魂振りにおける「遊ぶ」「遊ばせる」の概念から解説した。また日常の世界から離れた特定の時間と空間に限られた中で活きる「遊び」という意味合いも加えた。「〝遊び〟という捉え方が人類の根源的な文化の源であり、まさに遊びの中で、共同の創造力が発揮される。そこには我々が継承している文化の営み、祭りや神事芸能も入ってくる」と説明した。 ◆小國朋身・早池峰岳神楽保存会会長に聞く◆ 出演した小國会長によると「地元の集落を回るときは、その場で演目の注文が出たり、目の肥えた人から呼び声がかかったり、見る人の熱気が伝わってくることで、こちらも次第に気合が入っていく。そこに互いのコミュニケーションが成立していく」のだという。 ステージでの公演も多いが、その場合どうしても「民俗芸能」「伝統芸術」として捉えられてしまいがちだ。 「その点、今回は『神道セミナー』ということで、ホールの舞台でありながら、いわば宗教的な心づもりで場に立てた。こういう経験は初めてで、とても貴重だった。個人が舞うというよりも、場の中で神様に踊らされる雰囲気になっていくのが本意だから、会場の皆さんにも、そのあたりが伝わったと思っています」 ※ 今回の神道セミナー講演録はDVDとともに制作予定(非売品)で、会員の方限定で配布させていただきます。 入会ご希望の方は「入会案内」ページ(こちらをクリック)をご参照いただくか、事務局までお問い合わせください。 このページのトップへ