Category: セミナー・シンポジウム

日本の伝統的宗教文化であり、プリズムのように多くの面を持つ神道。神道セミナーでは、そのプリズムに光をあて、さまざまな色に反射する神道の姿を見ていきます。毎年、日本のどこかで、世界各地から招かれた研究者や実践家が、講話や映像で神道について解説をする神道セミナー。ぜひご参加ください。

第16回国際シンポジウム「災害と伝統芸能」

国際シンポジウム「災害と郷土芸能」が2月25、26日の二日間、岩手県大船渡市盛町の大船渡リアスホールで開催された。神道国際学会、および地元のケセン地方(住田町・陸前高田市・大船渡市)の市民大学「ケセンきらめき大学」が共催した。東日本大震災の津波で犠牲となった方々の鎮魂をあらためて祈念するとともに、地域復興を目指すにあたっての基本理念や、伝統芸能を含めた地域民の結束の重要性などを話し合い、提言を行なった。 神道国際学会は東日本大震災から間もなく一年となる2月25、26両日、国際シンポジウム「災害と郷土芸能」を岩手県大船渡市のリアスホールで開催した。ケセン地方(大船渡市・陸前高田市・住田町)の市民団体「ケセンきらめき大学」との共催事業で、大船渡市が後援した。 同震災の津波で大きな被害を受けたケセン地方。当シンポでは、同地域に継承される伝統芸能の奉演により犠牲者の鎮魂を改めて願い、併せて地域復興における基本理念、芸能を含めた地域民の結束の大切さを語り合った。 第一部・初日 「ケセン鎮魂のための地域伝統芸能大会」    鎮魂にむけケセンの郷土芸能を奉演 初日(第一部・25日)は、ケセンきらめき大学が主体となった「ケセン鎮魂のための地域伝統芸能大会」。雪の舞うあいにくの天候だったが、地元の人々を含め多数が来場した。 開会にあたり、特別来賓の明石康氏(元国連事務次長)、来賓の戸田公明氏(大船渡市長)、主催者側の鈴木迪雄氏(ケセンきらめき大学アドバイザー)がそれぞれ挨拶した。 うち明石氏は、震災後に示した日本人の抑制的な態度について、「一人一人の立派な態度、絆、連帯感は世界に多くの感動をもたらした」と述べ、海外メディアが「静かなる威厳」との表現で日本を賞賛したと紹介した。その上で、今シンポは「なぐさめ、鎮めと同時に、山河のありがたさ、人間と自然の関係性などを考える絶好の機会となる」と期待感を表明し、さらに「再建に向け、地元市民は粉骨砕身、着々と前進している」と被災地の人々に敬意を送った。 戸田氏は地元を代表して、全国からの参加者に歓迎の意を表すとともに、当地の伝統芸能に関しては、踊り手や指導者、装束や練習場所を津波で失ったものの、「絆によって芸能を伝承していくことは不可欠。多くの協力を得て郷土芸能は今も継続している」と報告した。そして、「シンポジウムを通じて、私たちの取り組みを世界に発信していただくことは復旧・復興に弾みがつく。私たちも夢と希望のある新しい町づくりに向け、一致団結して歩み始める」と、新たな決意を示した。 鈴木氏は、「多くの命と人々の生活を震災が襲い、大きな悲しみがもたらされたが、地元では一歩一歩、前へ歩んでいると聞いている。その中で、地元の人たちが誇りとしている芸能が犠牲者の鎮魂となればと考えている」と語り、今シンポの意図と意義を強調した。 芸能奉演を前に、小島美子氏(国立歴史民俗博物館名誉教授)が演目の解説を行なった。同氏は、民俗芸能の盛んな当地域における「剣舞」や「鹿踊り」などに込められた、非業の死や犠牲への慰めという主旨を踏まえて、「現代では、芸能の本質が失われつつあるが、本日は、その本質にふさわしく演じられる。また『百姓踊り』のように、庶民の工夫で新しい芸能ができていくのも一つの大きな力だ」と感慨を込めて話した。 郷土芸能を奉演したのは七団体。勇壮に、あるいは野趣豊かに披露される一つ一つの舞いや所作に客席からは盛んな拍手が送られた。町の復興に着手したところということもあり、来場者からは「郷土の素晴らしさを感じた。思わず涙が出そうになった」との声も聞かれた。 奉演された演目と奉納団体は次の通り。 「生出神楽~橋弁慶~」生出神楽連(陸前高田市)▽「門中組虎舞」門中組振興会(大船渡市)▽「赤澤鎧剣舞~太刀踊り~」赤澤芸能保存会(同)▽「行山流外舘鹿踊り」外舘鹿踊保存会(住田町)▽「浦浜念仏剣舞~念仏踊り~」浦浜念仏剣舞保存会(大船渡市)▽「金成百姓踊り」金成百姓踊り保存会(陸前高田市)▽「小通鹿踊り」小通芸能保存会(大船渡市) 第二部・二日目 国際シンポジウム「災害と郷土芸能」 鎮魂・供養と民俗芸能、そしてコミュニティの結束―― 講演とパネルディスカッションを展開    二日目(第二部・26日)は神道国際学会によるシンポジウム「災害と郷土芸能」が開かれ、三宅善信氏(神道国際学会常任理事)を総合司会に、講演とパネルディスカッションが行なわれた。 冒頭、初日に引き続き挨拶した明石氏は、前日の芸能奉演について、「当地域は再生を目指して、しっかりと足並みを揃えていると感じた」と感想を披瀝。そのうえで、シンポジウムについては、「二十一世紀、ますますグローバル化する中で、自己アイデンティティを自覚し主張することは大事。しかし他者への理解、尊重も進行させねばならない。我々の行動として課題を乗り越えるきっかけとなれば」と期待を込めた。 主催者として挨拶した薗田稔氏(神道国際学会会長)は、「ここ三陸地方の津波による多くの命の犠牲を無駄にしてはならない。地域社会の再生を真剣に考えることが鎮魂になる」と強調。さらには、地域復興への枠組みに関して、「昨日の民俗芸能にも感じたが、我々は生きた人だけでなく、先祖、目に見えないもの、そして自然も参与してコミュニティを作ってきた」と述べて、今シンポがコミュニティ再生への一助となるよう来場者の参画を呼びかけた。 同じく主催の田村満氏(ケセンきらめき大学学長)も挨拶し、郷土芸能の伝承について、「震災後、大変なハードルがあるが、乗り越え、伝えていかねばならない。その思いに真剣さ、本気さがあれば足腰は強くなる。そうすれば今後も伝えていける」と力説した。 続いて講演があり、平山徹氏(大船渡市郷土芸能協会副会長)が「わが故郷の郷土芸能・復興への絆」、ロナルド・モース氏(元カリフォルニア大学教授)が「地球的視野における自然災害」、赤坂憲男氏(学習院大学教授)が「災害と宗教・文化」と題してそれぞれ話した。 平山氏はまず、岩手県内に伝わる芸能の種類や数について解説し、うちケセン地域は「郷土芸能の宝庫だ」と述べて、特に大船渡市の芸能に関して、部門ごとの特徴を紹介した。同氏は、県内でも近世、伊達藩と南部藩のいずれに属したかで特色があるとし、ケセンの鹿踊りが行山流として伊達藩の流れを色濃く残しているとした。さらに、当地芸能の震災による被災状況については、津波で装束から備品まですべて流された芸能保持団体が続出したとし、「涙も言葉も失った。『伝統を継承するのも中断か』と不安がよぎった。しかし全国から復興への支援、援助をいただき、感謝の念とともに復活に尽くしている」と伝承への決意を語った。 モース氏は、世界の災害と同様、東日本大震災においても、災害に対する備えが役に立たなかったこと、災害に対する政治的・経済的な対応が低かったこと、災害とコミュニティの関係に対する社会の理解が希薄だったこと──など、今後への課題が浮き彫りになったとし、「人間には順応していくための能力がある。生活を復興するために意欲しなければならない」とまとめた。 赤坂氏は冒頭、津波の被災地を歩いた体験から、「そこには宗教、あるいは宗教まがいのものが、あちこちに露出していた」と切り出し、新興宅地や水田開拓地から背後へと奥まった丘にある、古い由緒を持つ神社が津波から生き残ったとして、「被災地を歩く旅が、気がついてみると、残った神社をお参りする巡礼のような旅になっていた」と語った。そして、訪問地のいくつかを事例として挙げながら、その精神的な光景を紹介した。とくに、供養と鎮魂の情景を取り上げ、あらゆるものにこもる命をあの世に送り返す心持ちの露出した東北の精神を強調。その目撃の経験によって、民俗学者として「民俗学が試されたり、変更を余儀なくされたりした」と吐露し、最後に、生けるものと死者、人間と自然との付き合いや関係へ思索することの重要性を指摘した。 三氏の講演後、茂木栄氏(國學院大学教授)を司会にパネルディスカッションがあり、講演の三氏に薗田、小島の両氏、ムケンゲシャイ・マタタ氏(オリエンス宗教研究所所長)が加わり、鎮魂・供養と祭り・民俗芸能の深いつながり、そこから発展するコミュニティとの関係について議論が続いた。 閉会にあたり挨拶したマイケル・パイ氏(神道国際学会理事)は、自然災害において人災の側面も考慮すべきだと付け加え、総合司会の三宅氏も、日本文化と自然災害の切り離せない関係を強調した。 オプショナルツアーの報告について: 伝統芸能復興・保存応援ツアー オプショナルツアー「被災地の社寺を訪ねる」国際シンポの翌日に催行  神道国際学会は、岩手県大船渡市での国際シンポジウム「災害と郷土芸能」を終えた翌日の2月27日、オプショナル・バスツアー「被災地の社寺を訪ねる」を実施した。ケセンきらめき大学観光学部長で観光ガイドの新沼岳志さんが案内を担当した。  早朝、宿泊の大船渡プラザホテルを出発した一行は、市内を一望する加茂神社を正式参拝。荒谷貴志宮司の父君である禰宜様から、大津波が襲来した際の様子、その後にとった行動などについて話を聞いた。  続いて世界の椿展がオープンしたばかりの碁石椿館(大船渡市)を見学し、陸前高田市へ入った。    まずは南三陸の名刹として名高い禅寺、普門寺(曹洞宗)を参詣。次に、津波に押し流された同市の中心地を訪れた。廃墟となった市役所の前には祭壇がおかれ、周りには赤いランドセルが積まれていた。参加者はその前に整列して黙祷。それぞれになくなられた方々の冥福を祈った。    ついで、高田松原で唯一残った「奇跡の一本松」を遠望しながら、ガイドの新沼さんが語る当時の惨状に聞き入った。    最後に〝気仙成田山〟金剛寺(真言宗智山派)を参拝した。高台にある同寺には一時避難した人も多かったという。    さらに同寺の近くに鎮座していた今泉天満宮を拝した。流された社殿には結界が張られ、樹齢八百年といわれるご神木の「天神の大杉」のみが当時のままに立っていた。  ガイドを務めてくれた 陸前高田市の新沼岳志さん

第15回神道セミナー「外国人学者の眼に映ったカミ・ホトケ」

本会主催の一般公開講座、第15回神道セミナーが2月27日午後、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮直会殿で開かれた。今年のテーマは「外国人学者の眼に映ったカミ・ホトケ」で、約150人が参加した。後援は鶴岡八幡宮、協賛は槐の会。 講題と講師は「自然、人間と神々の世界」ランジャナ・ムコパディヤーヤ氏(インド・デリー大学東アジア研究科准教授)、「神道論における開放性と主体性」劉長輝氏(台湾・淡江大学准教授)、「仏教と在地信仰――神道の比較研究の可能性を探って」ファビオ・ランベッリ氏(米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)、「本地垂迹の伝統にみる神と仏の多層性」ウィリアム・ボディフォード氏(米カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)。コメンテーターは国際日本文化研究センター教授で東京大学名誉教授の末木文美士氏、司会は同センター准教授で本会副会長のジョン・ブリーン氏。 開会にあたり司会のブリーン氏は「由緒ある当八幡宮さんで開く本セミナーを実りあるものに」、本会会長の薗田稔氏は「桜も咲き始めた素晴らしい境内で催させていただくこと、よし田田宮司様に篤く御礼申し上げる」とそれぞれ挨拶した。また、会場となった鶴岡八幡宮の宮司、よし田茂穂氏は「日本人の信仰の内にあるカミ・ホトケについて、外国の先生方から紹介いただく。どのように解いてくださるのか、我々も楽しみにしている」と歓迎の辞を述べた。 自然と神々と人間が密接につながる神道 ムコパディヤーヤ氏 外来のものと融合してこそ自国文化が発展がする 劉氏    ムコパディヤーヤ氏は、自然宗教として解釈される神道やヒンズー教における神観念について、神々たる自然現象を神格化して捉えるヒンズー教、国生みや神生みで生まれる自然や神々と人間との緊密なつながりを示す神道──などと説明し、さらには宇宙を生命体とみる新宗教の生命主義、日本人の宗教心、宗教の社会貢献へと話を進めた。 劉氏は、日本文化ひいては神道に関して、外来文化と融合することで自国文化を育て発展させることが可能になったという開放性と主体性の両面があると論じた。そして、仏、儒、道などを受容した様相とともに、仏家神道における仏本神迹、社家神道・吉田神道に見る神本仏迹などの思考様式を開放性と主体性から考察し、山鹿素行の神道論における儒教の捉え方、自国尊重の意識にも言及した。 神道は仏教と在地信仰の関係のあり方の中で展開 ランベッリ氏 社会における神仏の機能 ボディフォード氏    ランベッリ氏は、黒田俊雄の顕密論に触発された日本国内外の学者による中世神道研究の展開に近年、行き詰まりが見えるのは、中世神道説の背景に多様性と多層性、開放性があるのは明らかであるにも関わらず、一般的には保守的、還元主義的な神道理解が多くを占めるところにあるとした。そのうえで、神道は仏教と在地信仰との多様な関係のあり方の中で展開してきたという視点からの研究が重要だと指摘した。 ボディフォード氏は、日本の神と仏を理解するアプローチとして、社会における神・仏の機能という観点を提起し、神は土地の繁栄と豊作、そこの氏族を守ったとした。一方、仏は時空を越えた普遍的な教えを説いたとし、その抽象哲学的な教えに人々が近づき、教説が日常的に機能していくために、神々も役割を果たしたとした。また、仏教教義に通じる「入り口」を開いた具体的様相として、鶴岡八幡宮などの流鏑馬や放生会の儀式を挙げ、神仏を合わせたローカルとユニバーサルの組み合わせに日本的特徴があるとまとめた。 コメンテーターの末木氏は、日本の宗教における神と仏の関係、習合について触れ、独立した神道と仏教が対等に結びついたという状態ではないものの、体系を有した仏教が在地の神を吸収してしまったというわけでもないという一種のバランスがあるとしたうえで、各講師の神・仏に関する講義にコメントと質疑を与えた。 セミナーではこのほか、会場からも多くの質問が寄せられ、終了に際して挨拶した薗田会長は、新たな視点や発想による外国人学者の講義に、参加者ともども実りあるセミナーになったと謝意を表した。 出講者の簡単なご紹介(敬称略) 「自然、人間と神々の世界」ランジャナ・ムコパディヤーヤ (インド・デリー大学東アジア研究科准教授) 「仏教と在地信仰――神道の比較研究の可能性を探って」 ファビオ・ランベッリ(米国・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授) 「本地垂迹の伝統にみる神と仏の多層性」ウィリアム・ボディフォード (米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授) コメンテーター=末木文美士 (国際日本文化研究センター教授、東京大学名誉教授) 司会=ジョン・ブリーン (国際日本文化研究センター准教授、神道国際学会理事) スカパー放映予定 このセミナーの模様がスカパーにて放映決定。 216チャンネル「精神文化の時間」 4月24日(日)21:30~22:30 4月28日(木)21:30~22:30 放映された映像は、DVDとして講演録とともに神道国際学会の会員には後日、無料配布される。 このページのトップへ

第14回神道セミナー「神道と武士道」

第14回「神道セミナー」が2月28日午後、茨城県鹿嶋市で開催された。年一回、全国各地を会場に開く公開講座。今年のテーマは「神道と武士道」で、「剣聖」とうたわれる塚原卜伝ゆかりの鹿島神宮を主会場とした開催となった。あいにくの雨模様だったが、約150人が参加し、剣術古武道の一大流派「鹿島新當流」による奉納演武や講話、パネルセッションを熱心に参観・聴講した。うち「剣聖塚原卜伝顕彰と奉納演武」では鹿島新當流の第六十五代宗家、吉川常隆氏が関東武術や同流の解説を行ない、門下が実演を披露した。続く基調講話では、菅野覚明理事(東京大学大学院教授)が「武士道、自然、神道」と題して話した。パネルセッションでは、ジョン・ブリーン理事(国際日本文化研究センター准教授)をモデレーターに、アレキサンダー・ベネット理事(関西大学准教授)、ムケンゲシャイ・マタタ理事(オリエンス宗教研究所所長)、菅野理事がパネリストとなって武道実践と武士道研究の視点から発言を行なった。総合コメントは岩澤知子理事(麗澤大学准教授)が担当した。総合司会は梅田善美理事長。途中、国会議員などからの祝電も披露された。 鹿島新當流が奉納演武を披露 セミナー開始にあたり、本会役員や関係者、参加者らは鹿島神宮を正式参拝した。 続いて同神宮武徳殿に移り、鹿島新當流による奉納演武を参観した。演武にあたり、同流の概要を説明した宗家の吉川氏は、鹿島の剣が古代に由来し、中世には「鹿島七流」といわれるほど隆盛を極めたとした。とくに塚原卜伝は修練とともに鹿島神宮に千日の参籠祈願をして神示を受けたが、以来、流派は鹿島新當流となり卜部吉川家に継承された。同氏はその精神について、「人の和、平和の世を作る。その精神論が合わさったものと考える。強さをむやみに表に出さないところに、後世の人が剣聖と呼んだゆえんがある」と話した。そして門下による「面ノ太刀」「中極意霞ノ太刀」「高上奥位十箇ノ太刀」などの演武に解説を加えていった。 ◇  ◇  ◇ この後、会場を同神宮前の新仲家ホールに移し、講話とパネルセッションが行なわれた。 開会にあたり同神宮宮司の鹿島則良氏が歓迎の挨拶をし、国づくりに当たった祭神・武甕槌大神について説くとともに、一日は東国・鹿島から始まるとし、「鹿島は武の神様であると同時に民間の信仰も篤かった。私たちに幸せをもたらすミロクの船が鹿島に着くともいわれる」などと語った。 日本人の自然観、自己了解――武士の表芸にも神・自然との関係が 基調講演で菅野理事 基調講演の菅野理事は、自然との関わりのなかから日本人が身につけてきた神道や武士の精神について論及した。人間は生活において意識的に自然に働きかけ、自然と物質交換をしているとし、和辻哲郎の『風土』を採り上げながら、モンスーン型にあってしかも日本的な特徴をみせる自然観や自己了解の仕方を解き明かした。そして、「日本の神様は自然神。神様と人間の関係があり、自然との間に関係するところに神道がある」と話し、武士の表芸も原型からみれば神に関係しており、自然に承認され神仏に交流することが目指されたと解説した。 パネルセッション 「武道精神は活かしてこそ生きる」 ベネット理事 「『武士道』の真意を理解すべき」 マタタ理事 パネルセッションではまず、ベネット理事が剣道の型を実際に示しながら、武士道や武道にある精神、殺傷から人を生かす技へという武道の変遷、そこに底流する緊張感などを説き、「武士道精神、武道文化に自己満足しているきらいがある。強さ、優しさが武道の中には生きているはずで、その精神を実際のものとして実行しなければいけない」と語った。 続いてマタタ理事は、新渡戸稲造が『武士道』を書いた背景や真意を探り、「精神的な混乱状況のなかで新渡戸は、和魂洋才など新たな文明を生まれさすことを考えていたに違いない」と話した。そして、一般に言われる「日本の心」「日本の文化」と新渡戸の思考のあいだにあるズレを指摘し、「武士道」の正しい理解が必要だと問題提起した。 菅野理事は基調講演を補足するかたちで、武道のいう武勇や強さの本意を示唆し、人間が生きるなかで必要とされるものとした。 「日本人の精神に響き渡る価値を追求したい」 総合コメントで岩澤理事 セッション後には吉川氏も加わった講師陣が会場からの質疑に答えた。 プログラムの最後、総合コメントを行なった岩澤理事は、講演とセッションでは武道の原型にある日本人の観念に始まり、武道の歴史や変遷、そして思考の抽象的な進化までが論じられたとし、そのうえで、女性の立場から見て、日本的なるものや男性的なるものを越えていく課題的な要素にも触れ、「精神の底に響き渡るものの価値を追求していきたい。日本人としての存在を徹底し、究めることにより、世界に共通するものを見出すことが大事ではないか」とまとめた。 スカパー放映予定 このセミナーも模様がスカパーにて放映決定。 216チャンネル「精神文化の時間」 4月25日(日)21:30~22:30 4月29日(木)21:30~22:30 放映された映像は、DVDとして講演録とともに神道国際学会の会員には後日、無料配布される。 出講者の簡単なご紹介 吉川常隆師 鹿島新當流宗家に生まれた。幼時から斯道の研鑽に励み、第六十五代宗家を継いで、當流指導に精進されている。 菅野覚明氏 専攻は倫理学・日本倫理思想史。『神道の逆襲』(講談社現代新書・サントリー学芸賞受賞)、『武士道の逆襲』(講談社現代新書)の名著がある。神道国際学会理事。 ジョン・ブリーン氏 英国ロンドン大学SOASで日本学科長を務め、平成20年から現職。神道や日本近現代史の研究で多くの論文や著書を発表している。古武道の研鑽にも励む。神道国際学会理事。 飯田清春師 学生時代から合気道の研鑽に励み、(財)合気会の理事を務める。全国一宮会会長。神道国際学会理事。 アレキサンダー・ベネット氏 ニュージーランド出身で、国際剣道大会の同国チームの主将を務めた。京都大学で武士道をテーマに博士号を取得。神道国際学会理事。 ムケンゲシャイ・マタタ師

第13回神道セミナー「外国人研究者が語るお伊勢さん」

平成21年 2月22日、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮・直会殿にて第13回神道セミナーが開催された。後援は鶴岡八幡宮、同宮崇敬団体の槐の会が協賛。約250人が参加した。今回のテーマは「外国人研究者が語るお伊勢さん」。第62回「式年遷宮」が進むなか、伊勢信仰に焦点を当てるとともに、神道研究の国内外を超えたネットワーク化という本会目的に沿って、海外研究者に講師を務めてもらった。 プレゼンターはアレキサンダー・ベネット氏(大阪体育大学講師、本会理事)。講話は4題で、ヘィヴンズ・ノルマン氏(國學院大学神道文化学部准教授)が「斎宮とその世相」、マーク・テーウェン氏(ノルウェー・オスロ大学日本学科教授、本会理事)が「院政期の伊勢神宮」、劉琳琳氏(中国・北京大学外国語学院日本語言文化系専任講師)が「江戸時代庶民の伊勢信仰」、ジョン・ブリーン氏(国際日本文化研究センター准教授、本会理事)が「神宮大麻の近代史」と題してそれぞれ話した。総括はマイケル・パイ氏(ドイツ・マールブルク大学名誉教授、本会理事)。総合司会は本会の梅田善美理事長。 開会に当たって本会の薗田稔会長(京都大学名誉教授)は「今日は素晴らしい日和に恵まれ、心豊かに会場にきていただいたものと思う。神道や伊勢に関する歴史的な実態を改めて心で受け止め、伊勢を考えていただく機会としていただければ」と挨拶。また吉田茂穂氏(鶴岡八幡宮宮司)は「日本人は一直線に進歩に向かう歴史観ではなく、ものの行方、由緒を考え合わせながら、ものごとを進めてきた。まとめ、集約し、研ぎ澄ませていったのが神宮の遷宮。そこには時代の息吹が込められている。古代、神祭りをした原点に戻り、先に進め、繰り返してきた遷宮を含め、どういうふうに説いてくださるか、楽しみにしている」と歓迎の辞を述べた。 斎王を奉ることで 天皇自らも神に ―― ヘィヴンズ氏  発生の実態把握が難しい斎宮・斎王制について、その意味や起源を探ったヘィヴンズ氏は、「伝承というものは、後の歴史的事実、認識を示していることもある」と述べたうえで、宮殿にあった大王の祖神が崇神王朝の代に外へと祀られたとき、豊鋤入姫、倭姫がそれに従ったとの伝承を念頭に、「そのような歴史的認識から起こってきたことはありえる」と推測した。地方豪族、律令制定後は郡司が一族の女性を皇室に奉る采女制度についても、そこには巫女としての宗教性があったという説を紹介し、「天皇の場合、奉るにも上位者はいないから伊勢の神に斎王を奉った。これによって神との血縁関係を作ることで自らを神として権威づけた」と話し、時代とともに意味の変化はあっても、それぞれに関連性のあることを示唆した。 どの時代とも異なる 中世のアマテラス ―― テーウェン氏  新しい支持層を開拓していく必要性に迫られた院政期の神宮に関して、新たなアマテラス像の登場があったことを指摘したテーウェン氏は、12世紀の『天照大神儀軌』、鎌倉後期の『鼻帰書』を取り上げ、広く人々の心を掴むための複合体としてのアマテラスを紹介した。十一王子、荒霊としての閻羅王、さらには泰山府君祭に役割を果たす神々なども盛り込んだアマテラスの新解釈が行なわれたとした。また、天道や冥道がテーマとして浮上したこと、僧侶の宝志が伊勢は大慈大悲であり浄・不浄を選ばないと主張したこと、大日如来や観音菩薩、薬師如来とも関連付けられたことなどを付け加え、「『儀軌』に出てくる神は死者を裁いて人々を往生させる神である」「『鼻帰書』では、渡会家行の語るところを通して神宮の神職は理論とは別に一般の人々に対して閻羅王を登場させた」と話し、「閻魔の宮殿としての伊勢があり、みんな死んだら伊勢に行き、裁かれる。『だから生きているうちに伊勢にコネを作ったほうがいいよ』と諭したようなもの」と説明した。そして、「浄・不浄も、穢れも顧みない中世の伊勢は古代とも近世・近代とも異質な伊勢である」とまとめた。 一般庶民と思想家たる庶民それぞれの意識 ―― 劉氏  近世庶民の伊勢信仰、その行動の実態に焦点を当てた劉氏は、三河の豊田藩内の神明社を取り上げ、伊勢信仰の地域における拠点たる神明社への奉納行動について解説した。また、同じ庶民でも「羽田野敬雄や石田梅岩など史料の書き手としての庶民」と「記録を残さなかった、逆に描かれた庶民」に分かれるとし、「一般庶民は現世利益を求めたのに対し、いわば思想家としての庶民は、天照大神の末裔としての日本人という意識があり、国家意識があった」と論じた。 神国日本の原点としての 天皇、神宮 ―― ブリーン氏  神宮大麻をどう捉えるかを追求することで現代の神道の姿を浮き彫りにすることを試みたブリーン氏は、「神社本庁が神宮を本宗とするのは、皇孫の祖たる天照を祀るからにほかならない。天皇、神宮こそは日本人の回帰する原点であり、それこそが神国日本を復帰するときに目指すところだ」と指摘。戦後が第二次大戦前と異なるのは宗教法人として国家との関係がとりあえずないことだが、首相が正月に伊勢を参拝するなど国家と伊勢の関係は再びある程度、実現していると強調した。そして「神宮大麻が神聖なる御徴、単なる象徴でないことは確かだ。京都府神社庁が大麻頒布増の戦略として神宮大麻を自然の神と捉えたことは本庁が必ずしも好むところではない」と述べた。そして「神道=自然・環境とする欧米人や神職はいるが、本庁が二十一世紀に目指すところとは何の関係もないことは確か。神国日本が何を意味するのか、中身が問われるところだ」と提起した。 総括    講話をうけた総括でパイ氏は、1)古代では政治と宗教が必ずしも区別されなかったと考えられる 2)普遍性のある神が変化するときは、神への普遍的ニーズにも変化が起こっている 3)伊勢参拝の近世的な興隆は民間の信仰の隆盛と無関係ではない 4)簡単に戦前に戻れるものではないことは神道指導者も認識しているはず――など、学術的な討議における留意を述べ、プレゼンターのベネット氏も「過去から現在へ、そして未来への伊勢のあり方まで聞かせてもらえたと思う」とまとめた。 出講者の簡単なご紹介 「神宮大麻の近代史」 ジョン・ブリーン氏 (国際日本文化研究センター准教授) 「院政期の伊勢神宮」 マーク・テーウェン氏(ノルウェー国オスロ大学日本学科教授) 「斎宮とその世相」 ノルマン・ヘイヴンズ氏(國學院大学神道文化学部准教授) 「江戸時代庶民の伊勢信仰」 劉琳琳氏(中国北京大学外国語学院日本語言文化系専任講師) 総括 マイケル・パイ氏(ドイツ国マールブルク大学名誉教授) このページのトップへ

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