神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
書評 : 『書物の中日交流史』 
〈浙江省中日関係史学会叢刊D〉

  シルクロードならぬ「ブックロード」という言葉の生みの親、王勇・浙江工商大学教授(本会理事)による日中間の書籍往来史である。この歴史はすなわち、両国間の文化交流の歴史をも意味するはずだ。
 例えば著者は本書の中で、日本からの遣唐使たちの行動について触れている。
皇帝から賜られた陶磁器やシルク、調度品を帰国前に売り払い、その換金で本を買いまくったというのだ。唐の正史書に「書籍を買って海に浮かんで還る」とあるのだという。当時の東アジア文化圏の新興国家「日本」が、文化の中心である唐帝国に渡るにあたって何を求めていたのか、その心意気がありありとうかがえる逸話ではないか。
 もちろん、ブックロードは一方通行ではない。逆もあれば、いったん渡ったものが帰ったりもする。本書では古代から近代に至るまで、往来した書籍群とそれにまつわる人物が紹介されている。そしてその膨大な書物に付加された、ひょっとしたらシルクに勝るとも劣らない文化的な価値にも存分に触れている。
「漢文書籍を媒介とするブックロードは、西洋でいうシルクロードとは異なる景観を呈し、『交易』以上の深い意味合いを内包している」と著者は述べる。
 この「深い意味合い」の中身の計り知れない豊かさを疎かにしてはいけないと感じた。

▽王勇 著
▽288頁、1200円
▽国際文化工房

『書物の中日交流史』は、神道国際学会で取り扱っております。
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