神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
日々雑感 :梅田善美理事長

    昨年11月18日、横浜港の大桟橋に巨大なコンテナー船が停泊していて、埠頭に来た旅客や見学者たちを驚かせた。これは、アジアとヨーロッパの物流の増大にともない、世界で五指に入るドイツ国の貨物船会社「ハパック・ロイド社」が新造したものであった。   
    この日、その巨大船の命名式が、神道式の祭儀によって執り行われたのである。その報告は、この号の3ページを参照していただきたい。ドイツ国籍で、韓国で造船された貨物船が、どうして、日本の横浜で、しかも神道式の命名式を執行することになったのか、それには、神道国際学会のネットワークが大きな役割をはたしたのである。
    昨年8月末、神道国際学会のメールアドレスに一通のメールがとどいた。ロバート・コッターと名乗るドイツのボフム大学で比較宗教学を専攻している大学院生からで、「ドイツの船会社に勤めている友人から、同社の新造船の命名式を日本で行うので、神道式のセレモニーができるかどうか、可能性を調べてほしい、と頼まれた。ドイツの神道研究者に問い合わせたところ、オスロ大学日本学科教授のマーク・テーウェン博士を紹介された。また、ドイツのマールブルク大学宗教学部のマイケル・パイ教授の名前もあがった。それで、お二人に連絡したら、日本の神道国際学会本部に相談すればよい、といわれたので、ご協力をお願いしたい」という文面であった。そこで私は「ご協力できると思うので、詳しい情報を知らせてほしい」と返信した。
    10月はじめに、コッター氏から二度目のメールがとどき、「今、東京に来ている。ぜひお会いして相談したい」とのこと。ドイツの船会社からの委嘱をうけて、横浜での命名式の準備のために来日してきたのだった。
    本会事務局に来てもらって話を聞くと、式は11月18日、もうひと月と数日しかない。彼が用意してきた命名式全体のマスタープランには、神道祭典の部分が空白になっていた。すぐに神社本廰の国際課に電話で相談すると、横浜の伊勢山皇大神宮を紹介された。
翌日、私はコッター氏を伴って、横浜の伊勢山皇大神宮を訪れ、正式に神道式祭典の執行をお願いして、快諾を得た。その後、ハパック・ロイド社の日本支社との連絡をとりつつ、ほぼ一ヶ月の間に、神道祭典の日本語と英語の式次第を整えていった。
当日は、快晴。ドイツ国籍の巨大コンテナー船は、天照大神はじめ、海の守り神たちの祝福を受けて、「キョウト・エクスプレス」と命名された。
    ドイツのコッター氏から、オスロのテーウェン理事、ドイツのパイ理事を経て、当会へ、さらに神社本廰から伊勢山皇大神宮へとつながった神縁に思いをはせつつ、命名式にたちあった薗田会長、パイ理事とともに、青空に雄姿をえがくコンテナー船の航海の安全を、心から祈った。
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