神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道研究羅針盤 : 吉野裕子氏に聞く

私たちの祖先は易・五行を 宇宙の法則として捉えていた

   民俗学は明治以前の日本人がしていたことを対象としています。たとえ細かいことは違っていても、日本人は北から南まで全国、同じようなことをしているのです。つまり、私たちの祖先はその易・五行の法則に従って、大自然の働きに順応して生活してきました。
私どもの祖先は意味のないことは一つもしていないことに気づいたのですが、それがつまり宇宙の法則、易・五行だったのです。
   「易・五行」という手のひらの上には、仏教・道教・儒教をはじめ、その上には何でも乗ります。その法則に当てはめると何でもキチッと解決がつく。お祭りも民俗行事もそうですし、お茶や庭の配置などの日本文化もそうです。
   ところが、「陰陽五行」や「蛇信仰」を鍵として祭祀を解明する私の説は、民俗学者や神道研究者の間で耳を傾けてくださる方はいないのが現状です。むしろ他の分野の研究者とか、あるいは実際にお祭りをなさっている現場の祭祀者の方たちのほうが、私の本を読んで納得してくださるようです。
   祭りや民俗行事の研究には、まず定説を疑うこと、それから「易・五行」という敷居を一つ跨(また)いでものを見ること─それらは難しいことですが、絶対必要です。
私の場合、定説にも先輩にも縛られず、好き勝手にしてきましたが……。

研究テーマはまだ残っています

   私がこの世界に本格的に入ったのは50歳を過ぎてからです。「易・五行」を手がかりに、お祭りや民俗を見て歩いていると大抵のことは説明がつくのです。それを論文にして学位を取得しました。
   今も、学問上の弟子はいません。それでもお陰様で多くの本を出せましたし、カルチャー・センターには教室いっぱいの受講生が来てくれます。
   自由に研究できたのは本当によかったし、学問をするのに遅すぎることはありません。これからも、私に残されたテーマはまだいくつもあるんですよ。 (奈良市の吉野宅にて)




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