神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
From Abroad 外国人研究者紹介
エリカ・バッフェッリさん

イタリア・ベネチア大学 宗教社会学博士(PhD)

 大学で日本の文学、歴史、そして哲学・宗教を学んだ若き博士は最終的に、「宗教とメディア」とくに「インターネットと宗教」という極めて現代的かつ現時課題的なテーマに研究の身を置くことになった。「宗教教団が最新のメディアを使わなかったら、現代社会に生きている以上、信者さんとも教団外の人々ともコミュニケーションが取れない」との認識に立脚する。
 情報化社会といわれるなかで「情報武装化」は各教団にとって、ある意味もっとも切実な課題である。インターネットの活用、サイトの運営が当たり前になりつつあるが、教団による認識や取り組みにはかなりの差があるという。そこには現実的で悩ましい問題もある。「新宗教はとりわけメディアというテーマに熱心ですが、資金力のある大教団は本や雑誌を発行し、テレビ・ラジオで番組を持ったりできる。そこで小さなグループはお金のかからないインターネットを利用するのです」
 だが、その中にあっても、ウェブサイトが単なるインフォメーションに終わるか、よくてコミュニケーションの手段にとどまる事例が多いようだ。「良し悪しですが、アメリカでは信者さんがネットに入って、メディテーションするといったことも行われています」
 「宗教とメディア」――このテーマに取り組む研究者はさほど多くない。「日本では数が少ない気がします。それだけに研究を進めるのが難しい面もあるけれど、社会学的にも貴重なテーマだと思います」
 ベネチア大学で日本語部に属し、日本の宗教、なかでも現代社会で無視できない「新宗教」に関心が向かった。 新宗教・新新宗教の歴史を学び、論点のひとつとして教団のマーケティング戦略、イメージ戦略などにも目を向けた。フランス・ソルボンヌ大学に留学中、気鋭の新宗教学者に学び、ますます興味を深めたという。研究蓄積の少ないテーマなだけに机上の研究だけでは事足りない。日本とイタリアを往復し、教団への研究訪問やフィールドワークに飛び回る。
 今春、大学院を修了したばかり。日本での長期留学も視野に入れている。七月にはクロアチアで開催される国際宗教社会学会に参加し、これまでの研究成果を発表する予定。
 日本にはイタリア料理店は多くてうれしいが、本当においしい店は少ないと手厳しい。日本ではむしろスシが食べたいとのこと。ベネチア国際映画祭でも通訳として活躍する才女である。



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