神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神社界あれこれ:三重県の吟詠剣詩舞「神奈備会」

日本精神の甦り――老若一体で目指す三重県の吟詠剣詩舞「神奈備会」

 剣・詩舞に親しみ、心に日本精神を取り戻そう―
 三重県内で活動する吟詠剣詩舞の会「神奈備会」(本部・四日市市)が元気だ。この類の会は若手の減少や後継者不足に悩まされることが多いが、同会では20-30代の会員も熱心に稽古に励んでいる。
 「青年の育成を一つに掲げてはいるが、運営的には今後、若手が自然にやっていってくれるだろうと気楽に考えているんですよ」
 こう大らかに話すのは同会会長で剣舞・詩舞師範の一木紀之(翔雲)氏。詩吟40年、舞25年のベテランだ。剣詩舞のほか詩吟や刀法(居合)など精神性と礼節が重んじられる伝統芸能を本格的に教授する。だがひとたび練習場や公演舞台を降りれば、老若男女が一緒になった談笑の輪に加わる。ジョークも頻繁に飛び出す。
 「神奈備会」の発足は平成14年。それまでの剣詩舞の研究を一層極めようと所属する会を離れた一木氏のもとに、同じ所属の仲間数人が合流して発足した。現在は県内4カ所に教室があり、市町村文化祭に参加するほか諸施設への慰問、神社祭礼での奉納演舞などを行なっている。

舞は身体機能の力を思い出させる

 一木氏は「現代人は人間本来にある力を忘れ、力の使い方を見失っている」という。つま先やかかとがあること、左右を確認する目があること―そうした身体の機能を意識しながら十全に使いこなす努力を怠っているというのだ。それが精神の廃退にもつながっていく。舞の動き一つ一つには身体の持っている素晴らしい機能を思い出させる要素がある。
 稽古を付ける際に一木氏が留意していることは2つ。「受け身で教えられるばかりだと忘れるだけ。また、道具やマニュアルを早い段階で与えられると力にならない」ということ。
 もう一つは、神祇の加護に感謝すること。「『感謝しながらやらないと転ぶよ』とよく言うんです」

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 「日本の精神(こころ)を若い人に伝えるということを私以上に熱心に語っているのがこの人」と言って一木氏が目をやったのが古海玲子(瑛翔)さん。「神奈備会」設立時の仲間の一人だ。
 古海さんは社会と世情の混乱している現代だからこそ、若者とともにある「神奈備会」を――と女性の感性から主張してきた。神鎮まれるこの「神奈備」を会の名称に強く推したのも古海さんである。現在、同会の副会長として明るく気さくに対外的な宣伝活動に努めている。詩舞準師範であると同時に、民話・神話語りの活動も始めているという。
 剣詩舞道における厳しさと、普段着での付き合いの暖かさ――。会長、副会長はじめ古参勢の人柄に接して若手らは「舞の難しさを感じるが稽古は楽しい」と口を揃える。
 「日本の再生、よみがえりの一助になれば」(一木氏・古海氏)という「神奈備会」の活動理念は決して遠いとろこにあるものではないようだ。
 連絡先は神奈備会一木翔雲氏(電話0593-46-1260)





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