神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
新任理事紹介

 アレキサンダー・ベネット理事
(関西大学国際部准教授)

   自他ともに認める剣道愛好家。日本に留学した高校1年での出会いから剣歴は20年を超えた。研究の専攻も武道を軸とした日本思想史だ。
「僕は武道が好きだからやっている。やればやるほど得るものも多い。それは分かっている。しかし……」
   しかし、今の日本人の武道・武士道に対する態度や捉え方には少なからず疑問を感じているらしい。「美化したところで止まっている感じ」という。武道には社会的、教育的な意義があり、普遍的な真髄がある。「でも、良くないところだってあるかもしれない。都合の悪い部分を隠していたら、かえって逆効果だと思う」
   本来の極意も、ナショナリズムに傾いた史実も、どちらも知ろうとせず、本当の良さを海外に発信する意欲も少ない。「外国では武道に関心が高まっている。でも本当の理解はまだまだ。だから、ありのままに情報を伝えることが大事なんです」
   神道についてもまったく同様で、海外との相互理解はできていないのが現状とみている。「ナショナリスティックな時代があったことは否定できない。それもオープンにしたうえで、日本の魅力ある様々な文化が何らかの形で神道と関わりがあることを理解してもらう。そうすれば今までとは違う異文化コミュニケーションができるはず」
本会の理事として、外国人であることが、ある意味で神道の本来の姿を伝えていく武器になると考えている。

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   このほど財団法人講道館からの依頼で英訳書『嘉納治五郎と講道館』を刊行した。嘉納の教育思想や講道館柔道の歴史を収録する。「現代人はどうしても競技とみなし、勝利至上主義になる傾向がある」。同書では柔道をやる意味が伝わるよう思いを込めた。

   秋には日本武道協議会が各種武道を海外に紹介する『日本の武道』(仮題)を刊行予定で、その執筆も佳境に入っている。
   4 月に着任した関西大学では日本文化と日本中世史の授業を担当。また国際交流の体制強化を図る大学方針に沿って具体策を模索する仕事を任されている。
    同時並行で多くの仕事を抱え込んでいるが、「頼まれると『ノー』と言えない男なので……(笑)」

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    ニュージーランド出身。カンタベリー大、同大修士課程、京都大研究生、同大大学院博士課程を経て、国際日本文化研究センター助手、大阪体育大非常勤講師、帝京大専任講師を務めた。今春から現職。京大大学院時代の指導教官は本会会長・薗田稔同大学名誉教授。著書に『武士の精神(エトス)とその歩み―武士道の社会思想史的考察―』ほか。


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 本紙既報の通り、昨年暮れに開かれた本会理事会で平成21年度からの新役員が決まりました。うち新たに就任いただいた理事は4人の先生方です。新任理事を順不同でご紹介していきます。
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