神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
南開大学日本研究院に「日本思想文化講座」開設

   神道国際学会では、本年2月に開催された理事会で、中国天津市の南開大学日本研究院に5年間(2009〜2013)にわたる助成を行うことを決定した。それに伴い南開大学日本研究院では、日本思想文化を研究する講座を開設、活動を始めた。中国で日本思想文化の研究を神道国際学会が助成するのは、浙江工商大学日本文化研究所についで2番目となった。

   南開大学の日本研究は1960年代に端を発し、2003年に中国の大学及び研究機構としては唯一の大学院レベルの日本研究院を設立。日本研究の重鎮をそろえる一方、人材育成の名門研究機関として学界に高い影響力を持っている。今回の講座は、日本思想文化に関する理解を深め、中国国内及び国外学界との学術交流を促進し、中国における日本思想文化に関する研究の新たな進展を期することを趣旨として設立され、神道国際学会に助成を申請したもの。
   それに先立ち、昨年12月初め、神道国際学会の梅田善美理事長は以前から面識のあった劉岳兵准教授に招かれて南開大学を訪問、李卓院長や関係者と協議を重ねる一方、学部生や院生にたいし「日本人の『人生儀礼』に見る日本文化の特質」について講義をおこなった。
  助成申請のあった「日本思想文化講座」の内容は、「神道文化」を座標軸とする講演会や学術サロン(研究発表会)が企画されており、中国における神道に対する誤解を解くことが大きな目的のひとつとなっている。神道国際学会理事会ではこれを受理、このほど開設にいたったもの。

開設式では、王金林教授の講演会を開催

   5月19日の午前9時より、日本研究院の国際会議室において開設式が行われ、李卓院長はこの講座開設の趣旨と内容を説明、将来の期待を込めた挨拶をおこなった。開設式に参列したのは、主に日本研究院の先生(副院長宋志勇教授、歴史文化研究部の長趙徳宇教授など)と院生で、それ以外には、外国語学院日本語学部の先生と学生、合わせて30人ほどであった。
   開設式に特別講義として、中国日本史学会名誉会長であり、『日本神道研究』の著者で神道研究者の王金林先生が、「日本思想文化史における神道の地位」をテーマに講演をおこなった。王金林教授の話しは、日本における神道の歴史と日本思想文化との関係について、原始信仰から、皇室神道、仏教の影響を受けた神道、反仏教的神道、儒家神道、国学(復古)神道及び国家神道を順に、系統的、しかも克明に分析され、興味深いものであった。王先生は、神道が日本思想文化における重要な地位、及び中国の日本研究には神道研究がまだ不充分である現状を強調して、若手研究者に神道研究を重視しようと真剣に呼びかけた。その後の討論では、神道と中国思想との関係をめぐって、例えば原始神道と道教、神道と儒学などについて活発な議論がおこなわれた。
最後に李卓院長は、この講座の開設をきっかけに、王金林先生の呼びかけに積極的に応じて、南開大学の日本研究院では、日本文化の核である神道の研究推進に力を入れるとコメントして「日本思想文化講座」開設記念講演会をしめくくった。


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