神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
モスクワ代表部便り


    2000年の設立以来、モスクワ市内の国立モスクワ大学付属アジアアフリカ諸国大学内で活動を続けている神道国際学会ロシア連邦事務所では、かねてから懸案のロシア語神道事典の編纂と出版、神道エッセイ・コンテスト、神道講座「影クラブ」などを主なテーマとして活動を続けている。 

神道事典がまもなく出版
エッセイ・コンテストも例年どおり

    ロシア語神道事典は、神道国際学会本部からの資金援助を受けて、ロシア連邦事務所のモロジャコワ所長をはじめとする神道学者たちにより、3年がかりで着々と作業が進められ、このほど出版社のめどが立ち、現在は必要な写真や資料を収集の段階。また、例年どおりロシア語による神道エッセイ・コンテストもおこなわれる。締め切りは9月1日で、課題は下表のとおり。

ロシア語神道エッセイ・コンテスト
2009年の課題
 1.神道における儀式の意義
 2.現在日本文化における祭りの意義
 3.神道と全日本における諸信仰

   2002年に開始された「影クラブ」は、神道に関する講義とビデオなどの視聴覚材料を使用して、情報提供をしている。最近の2年間はモスクワ中心地にあるロシア国立東洋美術館の講義ホールを会場としてひらかれているが、昔の雰囲気に満ちた東洋美術館(写真)は、神道の講義にふさわしいと好評。百席以上あるホールに集まるのは、いつも女性の姿が多いという。
 講師には、日本文化・歴史・宗教を研究するロシアの日本学者があたっており、それぞれの研究分野の中で神道にかかわるテーマを選び、事務所所蔵のビデオや発表者自身が持っているビデオや写真などを使って講義をする。今年の「影クラブ」の活動は以下のとおり。
   1月24日、アナリナN・G教授(国立芸術学大学)による「獅子舞」について。2月二14日は「根付:神、人間、動物」をテーマにディアコノヴァE・M博士(ロシア国立人道大学東洋文化・古典古代研究所上級研究員)の講義。
3 月24日は、ゴルビンスカヤN・P氏(ロシア国立音楽大学付属音楽文化センター)が実際の音楽を使って「神道儀式における音楽」。4月28日は、シシュキナG・B氏(国立東洋美術館主任研究員)が「献華式」について。5月26日には、カレロワ・リュボフィ・ボリソフナ博士(ロシア科学アカデミー哲学研究所主任研究員)が、「稲荷信仰」について話をした。
 カレロワ博士は、自身が日本で撮影した稲荷神社、稲荷信仰にかかわる祭りや儀式の写真を見せながら、伏見稲荷大社を中心にして稲荷信仰の歴史について一時間ほど講義。その後、30分ほど会場からの質問を受けた。質問は「私が知っている限りでは、狐は日本人にとって悪いイメージを持つものだと思うが、どうして、稲荷神と狐は関係があるのか」「どうして稲荷神社の前には鳥居がおおいのか」など活発に行なわれた。聴講者は日本文化・日本宗教に興味を持つ28名。夏休みにはいり、影クラブは9月の新学期から講義を再開する。

Copyright © Shinto Kokusai Gakkai. All rights reserved.
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。