神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
伊勢本街道を歩く (9)  かい坂峠
吉井貞俊氏
(西宮文化協会会長)

   今は國道368号線として、この峠の下にトンネルが通じているが、初めここに登った時にはまだその工事すら行われてなく、昔ながらの峠道であり、峠茶屋の源跡すらあった。
   この麓がJR名松線の終点で奥津と称されている。名松線とは名張と松阪間の路線ということで名付けられていたが、途中で止り、そのままになってしまっていたのを、このたびなんと津市に編入された、奥津とは津の奥にある在所ということになり、ぴったりの地名とは興味深い話だが、この合併の時の町長がこのあたり随一の宿、結域屋の主人だったのも因果なこと、遷宮をひかえたこの時期に廃業されてしまったのは、まことに惜しい事である。この辺の家々は、伊勢式のメ縄を門口に年中飾っている。つまり根からの伊勢びとなのに、戦後宇治山田市が伊勢市と名乗ってしまったので、折角の伊勢という地名が狭い範囲の萎縮した地名になってしまったのは返すがえす残念至極なことである。             

(絵・文とも吉井貞俊:絵は本誌に掲載)

 本会会員吉井貞俊氏は現在、兵庫県西宮市に在住し、西宮文化協会会長をしているが、もともと伊勢の出身で、猿田彦神社の社家である宇治土公家に出生した方。氏はその因縁をもって、昭和48年の第60回正遷宮の際、大阪から伊勢まで伊勢参宮本街道を踏破し、さらに平成5年の61回の時にも同じ道筋を歩いたと聞いている。
 そして現在、次回の正遷宮を目ざして、3回目の本街道歩きを始めたとのこと。

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