神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
日々雑感 :梅田善美理事長


まことの和解はいつのことか?
 
     国連は2009年を「国際和解年」、「国際天然繊維年」そして「世界天文年」に制定している。この三テーマのうち「国際和解年=International Year of Reconciliation」を考えてみたい。
    今年が国際和解年に定められた理由・目的は、『あらゆる利害関係者の積極的関与を得て、確固たる恒久的平和の確立に必要な条件である和解プロセスの発展を追求する機会が国際社会に生まれることを目指す』とある。
    和解に至る過程で不可欠な要素は、敵対関係にある人々や組織、あるいは勢力の間で、敬意と寛容に基づく対話が成り立つかどうかであろう。
 現在の   世界に見られるテロや紛争の根もとには、宗教間の争いが大きくからんでいる。今は中東でのユダヤ教徒とイスラム教徒の対立が目立つが、キリスト教の中でもプロテスタントとカトリックの反目があるし、イスラム教にはシーア派とスンニ派の争いがある。
    宗教間対立というと、私には苦い思い出がある。パキスタンの首都イスラマバードで、泊っていた民家の目の前の道路で爆弾が炸裂して、門扉が飛ばされ、生命の危機にさらされた。表向きは政争にからむ事件だったが、背景にはやはりシーア派とスンニ派の対立があった。
    北アイルランドのベルファストに友人を訪ねたとき、空港を出たとたんに、銃を突き付けられ、「カトリックかプロテスタントか?」と誰何された。「ノー。私はジャパニーズ。シントウイストだ」「シントウ? ジャパニーズならブディストではないのか」そんなやり取りをしているところに出迎えの友人が来て、なんとか難を避けることができた。北アイルランドには、カトリック系住民とプロテスタント系住民との長年にわたる命がけの抗争の歴史がある。2001年9月11日の同時多発テロには、ニューヨークで遭遇した。
    前世紀には、異宗教間の対話を呼びかける運動が興って、さまざまな国際的な組織が発足した。今世紀に入ってからも、そうした運動はますます拡がっているが、真の対話が成立するにはまだまだ年月が必要のようだ。
    神道国際学会の設立時から顧問としてご指導を仰いだ故・櫻井勝之進先生が「宗教間の対話を進めるのに大きな役割を果たせるのは神道人である。それは神道が全ての宗教を尊ぶという寛容の精神をもち、どの宗派ともごく自然に付き合えるからだ」とおっしゃっていたお言葉を思い出す。
    国際和解年の今年はさらに、神道人の積極的な言挙げと活動が期待されている。

「ともしびの消ゆる世の中いまなるぞ
  さしそえいたす種ぞこいしき」
[出口なお・大本開祖]


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