神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
設立15周年を迎えた神道国際学会


今年の展開と課題  薗田稔会長に聞く

     本会の事業の柱の一つに、会員はじめ広く一般の方々にも参加いただいている「神道セミナー」があります。年1回ペースの開催ですが、昨年は「お地蔵さんと地域社会」をテーマに神戸の甲南大学を会場に催しました(第12回、2月24日)。関西特有の「地蔵盆」という年中行事は、地域社会の繋がりの中で世代を超えて、しかも神仏が一体であった時代の伝統を残しながら、人々の全体的な協力のもとで営まれ続けている貴重な宗教文化であることを改めて認識した次第です。

広い視野で日本の宗教文化を理解する

    さて、本会の研究交流事業は、いま申し上げたように、単に神道のみに固執して進めているわけではありません。国内の研究者もいれば外国人研究者も参加しています。テーマも神であったり仏であったり、神仏共存の歴史や文化を捉えるものであったりします。国際的、学際的であると同時に宗際的です。そのなかで、広い視野から、日本の宗教文化を対象に理解を深めていこうというわけです。
    そのためには研究者による、また一般会員の皆様による、様々な形での協力した動きが大事になります。今後ともご協力をいただければ幸いです。

環境倫理と神道に焦点を
諸団体との交流も

    今年、本会は設立15周年を迎えました。今年の概略的な年間テーマとしては、今、国内外で大きな課題となっている「環境倫理」に焦点を当て、神道との関連にも注目してみたいと考えております。
    この2月に開催する第13回「神道セミナー」の主題は「外国人研究者が語るお伊勢さん」です。ご承知の通り、伊勢の神宮で進行している「式年遷宮」では、御造替による旧い用材は他のお宮で再利用する。いわば自然の素材のリサイクルを意識せずに行なっているわけです。そうした観点からいえば「神道と環境倫理」に即した議論も期待されるところです。
    近年、環境問題や食の問題に関連して「田んぼ」をテーマとした会議や研究会が盛んになっているようです。稲の祭り、稲魂、田の神……。神道は農耕から生まれた宗教文化であり、「田んぼ」は神道にとっても、切っても切り離せないものです。
「田んぼ」とともに、「鎮守の杜」「社叢」という表現のある通り、「森」も神道と一体です。その名も社叢学会という団体があって、そこでは森林環境の定点観測や神社見学・調査などを試みています。
 こうした環境問題に関わる諸団体との協力を促進し、実際に会員同士が交流するという試みも目指したいところです。

会内外の学者を招いた研究発表会も検討

    日本文化や神道文化に関する本格的な研究や交流については、隔年で開いている「専攻研究論文発表会」を年一回の開催とし、本会の理事研究者のみならず、外部の研究者の方々にも参加発表してもらう方向を検討したいと思っております。
     ほかにも「神道セミナー」の地方開催の頻度を高め、多くの人々との交流を図るとか、全国神社の「由緒書」を英訳して海外研究者に提供するとか、様々な課題がありますが、理事会での活発な意見交換によって考慮したいと考えています。
    今年は「天皇陛下御在位20年」であり、また先の通り「神宮式年遷宮」も佳境となります。設立15周年の本会としても今後ますます、そうした様々な事象に積極的に関わりうる体制強化を目指したいと、気を引き締めているところです。
(談・秩父神社で)


Copyright(C) 2008 SKG all rights reserved
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。