神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
連載: 神道DNA 『インフル・金融ダブル危機』
三宅 善信 師

    アメリカ発の金融危機が引き金となって、世界恐慌の様相を呈してきた。金融界のみならず、アメリカの基幹産業の象徴とも言える自動車産業「ビッグ3」も沈没の危機に瀕した。連邦政府に対して「兆単位」の支援を要請するために、何億円もの年俸を取っているCEOたちが、デトロイトからワシントンDCまで自家用ジェットで乗り付け、米国民の怒りを買った。今回の金融恐慌が「100年に一度の経済危機」と呼ばれるのは、誰しも1929年秋にウオール街から始まった世界恐慌を想起するからである。この経済不況は、結果的には、第二次世界大戦という「特需」によって贖うしかなかったのである。
    私は、これまで、本連載において『低金利が日本をダメにした』(2007年7月)『ETに騙されるな』(2008年7月)等において、「円キャリトレード」や「排出権取引」などを例に挙げて、ことある毎にアングロサクソン流の金融資本主義を批判してきたが、その心配が現実のものと化したのである。
    私はまた、『インフルエンザと七草粥』(2006年1月)『遣唐使がもたらした伝染病と神々』(2007年9月)等において、中国からもたらされるとされる新型インフルエンザ(H5N1型)の危機について、3年以上前から警鐘を鳴らしてきたが、こちらも「パンデミック(感染爆発)」の危機が目の前まで迫ってきた。世間やマスコミは今頃になって大騒ぎしているのである。
 こちらの危機も「100年に一度の危機」と呼ばれている。なぜなら、人類最初の大量破壊兵器が投入された第一次世界大戦の死者が800万人だったにもかかわらず、同じ時期(1918年)に世界的にパンデミックを起こした「スペインかぜ(H1N1型インフルエンザ)」の犠牲者は、戦死者の3倍以上の2500万人にも及んだのである。当時の世界人口は、現在の約5分の一であるから、もし、現在、人類の誰も免疫を持たない新型インフルエンザが世界を襲えば、おそらく犠牲者は一億人を上まわる大惨事となるであろう。
    人によっては、「90年前よりも医療技術や衛生環境が良くなった」という人もいるであろうが、それは一部の恵まれた先進国での話であって、明日の糧すら確保できていない貧困地域は90年前よりもむしろ増加したし、何よりも、交通機関の発達により、多くの人が24時間以内に世界中の各都市に自由に移動できるようになった。ということは、新型インフルエンザウイルスに冒された人が、潜伏期間の内にあちこちへと移動してしまい、世界同時に感染爆発が起こってしまう危機がいつ訪れてもおかしくない。「世界同時テロ」ならぬ「世界同時感染爆発」である。
    案外知られていないことであるが、90年前の「スペインかぜ」はその名称から、「スペインから流行が始まった」と誤解されているが、これは誤りで、当時、欧州各国は戦争による報道管制で、各国で拡大する被害の状況を報じなかった中、スペインだけが報道規制がなかったので、「スペインで大量の死者」という報道が一人歩きして「スペインかぜ」と呼ばれるようになったのである。しかし、このH1N1型インフルエンザは、実は、アメリカのシカゴで流行が始まり(もちろん、最初はトリからヒトへと感染した)、アメリカから船で大量に欧州戦線に派遣された米兵たちから、次々と欧州の人々に感染していったから、本来は「シカゴかぜ」と呼ばれるべきで代物である。
   まもなく、「黒人初」となるバラク・オバマ大統領の就任式がワシントンDCで行われる。彼がアメリカの歴史にシカゴから新風を吹き込むことができるかどうか注目してゆきたい。ただひとつ言えることは、「『神道DNA』を読んでいれば、数年後に世界で起こることが予見できる」ということである。



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