神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
From Abroad - 外国人研究者紹介

マシモ・ラベリ 氏
イタリア国立カ・フォスカリ大学(ベネチア)東アジア学部教授

   日本文化や日本宗教を研究する欧米の多くの研究者同様、当初は仏教を切り口にしようとしたが、1975年の来日によって神道へと大きく舵を切った。「日本にやって来て神道にぶつかり、この国の思想や文化のルーツをしっかりと探ってみようと思いました」
  まずは75年から5年間、各地の祭りや年中行事を見て歩いた。初めは都市の祭りを調査し、飛び入りで祭りの輪に加わったりもした。
  だが、やがて地方の山村に分け入ることになる。神事や様々な民俗事象に直接に触れ、自身の目で確かめた。「だんだんと、そして、より深く……。山に入り、神楽や行事を見、神道や修験道を研究して、日本の信仰のルーツがイメージできました」

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  谷泰・京都大学名誉教授(文化人類学)、五来重・大谷大学名誉教授(民俗学、故人)、田中義宏・名古屋祭り同好会主宰など、関連分野の多くの研究者との交流を体験してきた。
  「谷先生の現地案内によって示唆を受けたものは大きい。五来先生は緻密に調査するなど厳しかった。田中さんとの祭り調査はとても楽しかったですね」と、研究者としての初期の頃の思い出を懐かしそうに語る。

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  出羽三山での神道と修験道・仏教との関係、即身成仏思想における体と心の関連と意味。九州の田の神さま、下北半島・恐山のイタコの世界……。つねに神道をキーワードとして念頭に置くが、対象は広い。現場に足を運び、民間信仰の深層にある日本人の心情へと踏み込んでいく。
  「彼ら、彼女らの繰り広げる宗教の世界。その深みに潜んでいるものの意味、時代的な変化を見極めたいのです」

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  最近は、伝統的な信仰や宗教が現代化によってどう変化し、また、どう変化しつつあるのか、その伝統は現代社会において、どういう意味をもつのか……などに関心を寄せ、新宗教の動向にも視線を当てている。
  「ヨーロッパの若者たちは今、日本の日本的な考え方やスタイルに大いに関心を持っている。それは単なるテクニックではなく、尊敬と真剣さを含んだ、分かりたいという探求心なのです」
  日本研究を目指す学生にも、それは言えることのようで、教鞭を執るカ・フォスカリ大学の日本研究部門は活気を呈しているらしい。専攻希望者は、ここ20年で数十倍に増えたそうだ。
  「学生は熱心です。あとは、現代的なデータやパソコンに頼るだけでなく、大事なものを実際に肌で感じて、イメージを膨らませていってもらえれば」とアドバイスを送っている。

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