神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
インターナショナル・シントウ・ファウンデーション
ニューヨーク便り

日本人の心の奥底に潜む神道観をさぐる
神道文化講座『日本人と神道』

 ISFで毎月開催している神道入門講座が、3月28日に開催された。今月のテーマは『日本人と神道』で太田垣オフィサーが英語で講義をした。参加者20名のうちアメリカ人11名。
 太田垣オフィサーによれば、最近開催する祭儀やレクチャーには、アメリカ人が多数参加する傾向がみられ、アメリカ人の神道や日本文化への興味の高まりを感じる。そのため、神道の基本的な概念から伝えようと今回のテーマを定めた、とのこと。
 はじめに、日本人の心理には神道観が大きく影響し、日本の文化や社会などを理解するにはまず、日本人の宗教観を見る必要があると説明した。農業が発達した日本では自然現象に人々の暮らしが大きく左右されるため、自然神を共同体で崇め、村の安全や産業発達などを祈願したことに由来した神道の祭りは、共同体、社会、国といった集団の平和、安泰を願うためであり個人のためのものではないのだが、最近は日本でも個人主義が進み、神社でのご祈祷も個人中心のものが多いといった近年見られる問題点も挙げられた。
 殆どの日本人は、人生を通して神社、仏閣などの複数の宗教施設へ行き人生の意義を確認、経験する一方、宗教を尋ねられると、多くが「無宗教」と答える、と説明すると、参加者からは、西洋人のもつ宗教の概念とは、大きくかけ離れていることへの驚きがうかがえた。
 最後に、日本では複数の宗教が一人の人生に関わる例をあげ、社会と神道の繋がりの強さを述べた。神棚と仏壇が家の中で並んでいる風景、僧侶がたくさんのぬいぐるみをお祓いしている風景、東京国際空港の棟上式、大企業の会社内にある鳥居、そして神職が教化しているわけでもないのに毎年日本では約8千万人の人々が元旦に神社仏閣へ出向く様子などが写真で説明され、日本人参加者さえも新たな発見をしたようだった。質疑応答では「日本人の心のよりどころは実際どこにあるのか」「神社の意義は」「わび、さびの精神は宗教観から来るのか」など、アメリカ人から多くの興味深い質問があがった。

しめやかになごやかに 五年祭執行

 3月11日には、かつてニューヨークセンターが神葬祭を斎行した故)高橋かつし氏を偲ぶ五年祭が執り行われた。
 アメリカ人を含む多くの方が参列された五年祭は静寂に執行され、式後の直会では、故人との楽しかった思い出話や神道を崇敬されていた様子などが語られ、しめやかなうちにも落ち着いた雰囲気で五年祭は締めくくられた。
 ISFにはこのような年祭の執行の依頼も来る。日本人や日系人の心の中には、神道で祭られたいという望みがあるようだ。ISFではこうした依頼にできるだけ応じる努力をしている。

UCバークレー校で神道講座
ジャーナリズム専攻の院生対象に

 4月2日、太田垣オフィサーは、カリフォルニア州にあるカリフォルニア大学 バークレー校(UCB)に招かれて、ジャーナリズム専攻の大学院生と韓国・日本・インドなどアメリカ国外のジャーナリストを対象として、神道についての講義を行なった。
 テーマは『神道と日本人』。日本人の深層心理や文化には神道観が大きく影響しており、日本を知るためには神道や日本人の宗教観を考察する必要があるということで、日本研究の一環として神道が取りあげられたもの。
 神道とは何かという基本的な説明から始まり、ついで、日本人からすると神道は宗教というよりむしろ文化的機能を果たしているという感が強いこと、ついで、「伝える」西洋の宗教に対して、神道は「感じる」宗教で日本人の中に入っていった。多くの人々の誤解を招いている「国家神道」についても説明した。
 講義中、聴講者から多くの興味深い質問が提出された。太田垣オフィサーにとり、特に印象的だったのが「神道に信者という概念は存在するか」「神主には戒律があるか」「神職の給料はいくらか」「神道には中国の宗教が影響していると思う」など、国籍によってバラエティに富んだ質問が聞けたこと。さらに、「神道は言挙げしない宗教といわれているが、グローバル化が進んだ現代では正確な情報を言葉でもって伝えることの必要性が問われている。神道を英語で伝えるという時代に適した講義をさせていただいたことは大変貴重な体験であった」と述べた。

ニュースレター「鎮守の森」再刊
日米二ヶ国語で

 ISFで以前発行されていたニュースレター「鎮守の森」が、このほど再刊された。英語と日本語で書かれた新しいニュースレターは、講座に参加するアメリカ人のために、神道やISFの情報がふんだんに盛り込まれ喜ばれている。

※写真、今後の予定などは ISFホームページに掲載。
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