神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神社界あれこれ

「自然と生きる環境生命文明」事業始まる
 出発シンポを伊勢・猿田彦神社で開催

 神職有志らで作る平成神道研究会が20周年、神道時事問題研究会が40周年を迎えたのを記念する事業「自然と生きる環境生命文明」が始まり、第1回の出発シンポジウム「自然と生きる環境生命文明を考える」が3月22日、三重県伊勢市の猿田彦神社で開かれた。
    基調講演では両会の幹事で東京・花園神社宮司の片山文彦氏が「原理主義と寛容性(神仏習合)」、国際日本文化研究センター教授の安田喜憲氏が「自然と生きる生命文明の世紀をめざして」と題して話した。また「我が社の神仏習合」をテーマにディスカッションも行なわれ、やはり両会の幹事で東京・氷川神社宮司の山本雅道氏を司会に、新潟・八海山尊神社宮司の山田泰利、埼玉・今宮神社宮司の塩谷治子、猿田彦神社宮司の宇治土公貞明の各氏が論を展開した。
    うち、今事業の推進にあたって会長を務める片山氏は講演のなかで、宗教復権を強く主張するところに原理主義台頭の原因を見るとともに、科学支配が絶対化するなかで宗教と科学が衝突する現状も指摘し、それら諸問題から抜け出す方途として神仏習合をキーワードに挙げて、絶対から多様化への発想転換を促した。そして「科学が絶対的であっても、私たちはそれで必ずしも癒され、救われない。そこに宗教の存在理由がある」「習合や多様化、寛容性を考えなければ多分、地球や生命体はもたなくなるだろう」と述べて、危機回避の環境生命文明を考える連続シンポジウムと活動に意欲を示した。
   今事業の実行委員長を務める安田氏も「頭で妄想するのではなく、自然をそのままに見つめ、崇拝してきたのが稲作民であり漁労民だった。神道であり、山川草木に命を見た仏教だった」と語り、命と自然の溶け合う時代を目指すことを呼びかけた。
   なお、同事業は今後、神道や仏教を中心に各宗派のトップや要職者も巻き込んで、月に一回のペースで宗教ゆかりの地を巡回しながらシンポジウムを開いていく予定にしている。

発足十年の「猿田彦フォーラム」
「サルタヒコ白書プロジェクト」始まる
「さらなる十年を目指す」と宇治土公宮司

 「猿田彦フォーラム」。道開きの神である猿田彦大神のこと、今後の精神文化に関することなどを研究し、振興を図ろうと、猿田彦神社(三重県伊勢市)を軸足にして活動してきた同フォーラムが発足10年を迎えた。
   公募による研究・創作への助成、新たな芸術や祭の創造、年報「あらはれ」と会報「かぐら座」の発行など、多彩な成果を世に提示してきた。世話人代表として鎌田東二氏(京都造形芸術大学教授)と細野晴臣氏(音楽家)が活躍し、顧問や世話人には各界の第一線にある気鋭の文化人を招くなど、運営面での充実ぶりも見せてきた。
   フォーラムの立ち上げを企図し、当初より代表に就いている猿田彦神社の宇治土公貞明宮司に今後の活動の方向について聞くと、「組織体というのは、つねに新たな血が入り、生まれ変わるもの。さらなる10年を目指すが、今の組織は20年のスパンで終わっていいと思っている」。そのうちに新たな世代の研究者やパフォーマーが別の観点で別の活動をやるだろうということだ。
   ともあれ、新事業として始まったのが「サルタヒコ白書プロジェクト」。日本列島には猿田彦大神がどれくらい、どのように祀られているのか。神社の、神楽の、あるいは伝承や文献のサルタヒコの実際を調べて集積する。
   「データベース化ですね。広がりや土着化があり、他の神と混合していたり……。よく分からない面があるのですよ。各地や各社でのカタチを知る。それが分かることで、サルタヒコやアメノウズメを信仰していた祖先の思いを、今後も持続していけるのだと思う」と宇治土公氏。
   新たな研究や創造が生み出されるためにも、「白書」の刊行が期待されるところだ。

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