神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
連載: 神道DNA 『G8サミット 日本の出番』
三宅 善信 師


 本年7月上旬、北海道の洞爺湖でG8主要国首脳会議(サミット)が開催される。米ソ冷戦と石油ショックという西側先進国にとって「東西と南北」ふたつの対立構造に対処するため、フランスのジスカール・デスタン大統領の呼びかけで第1回目のサミット(当初は、仏独伊英米日の6カ国で構成)が開催されたのは、1975年のことであるから、今年で34回目のサミットとなる。
  その間、世界の情勢が激変したことは、ここで改めて指摘するまでもない。「敵」であったはずの「悪の帝国」ソ連が、あろうことかいつの間にかG8のメンバーになってしまった。そして、当初はオイルマネーという武器を手にして西側先進国の経済支配に対抗しようとした中東諸国では、その後「イスラム原理主義」で理論武装した勢力が優位になり、テロという手段で欧米的価値観に対する異議申し立てを行うようになった。
 また、本来ならば主権者である民衆の前に出て、民主主義と市場経済という価値の優位性を全世界に高らかに謳い上げるG8各国の首脳たちのパフォーマンスの場であるはずのサミット会議が、いつの頃からか、「警備」を理由に、民衆の目から遠く離れた離島や僻地でコソコソと行われるようになったのも象徴的である。
 「地球温暖化」問題の重要性はいうまでもなく、1990年以後、「マネー」という化け物を信仰する輩(「投機ファンド」がその典型)が、現物市場の数千倍の規模に達した金融先物市場をかき回すことによって、一国の経済が破綻したケースをわれわれは幾たび見せられてきたことであろうか。何千万人もの国民による民主的な選挙によって選ばれた正統な政権が、なんら民衆の信任を得ていないほんの一握りの「ハゲタカ」による恣意的な市場操作の犠牲となって崩壊した。これらに抗議する「反グローバリズム」の動きが先進国の市民から湧き上がってきたことももっともである。
 このような時期に、日本でG8首脳会議が開催されることの意義は大きい。現実に、日本政府にそれだけのリーダーシップが発揮できるとは思えないが、日本だけが、世界を覆う東西・南北の間の対立を和解させる可能性があるからである。なぜならば、G8各国中、日本人だけが、他の七カ国とは異なる宗教的文化的背景を有しているからである。
 「真理や正義はひとつしか存在しない」と考える一神教的理解では、対立する「異教徒」を皆殺しにしてしまう以外、中東における暴力の連鎖は止めることはできない。正義・不正義の如何に関わらず「非暴力のほうが尊い」という仏教の考え方を導入するほうが、よほど効果的である。また、人間を大いなる自然の一部分であると見なし、神仏と自然は同等の存在であるという日本の伝統的価値観を人類が共有するほうが、はるかに地球温暖化防止に繋がる。
 そのために、G8首脳会議に先立って、6月27日から29日にかけて、世界各国からの宗教指導者を招いて、大阪と京都で「G8宗教指導者サミット」が開催される。そこでは、伝統仏教各宗派の僧侶や由緒ある神社の神職らが、現代世界が抱える喫緊の課題である地球環境・民族紛争・経済格差などの問題について、海外の宗教指導者や学者と真剣に討議し、宗教界からの意見を総理大臣官邸を通じて、G8首脳会議に提言することになっている。関心のある人は、「G8宗教指導者サミット」のウェブサイト(www.relnet.co.jp/g8)をご覧になって、参加を申し込んでいただきたい。



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