神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
連載: 神道DNA(2) 「神道と愛・地球博」  三宅善信師

 3月25日から9月25日までの185日間、名古屋の東部丘陵地帯を会場に、1970年の『大阪万博』(正式名称は「EXPO 日本万国博覧会」)以来、35年ぶりに日本で開催される『愛・地球博』(正式名称は「2005年日本国際博覧会」)が話題になっている。

 この万博のメインテーマは、「自然の叡智」ということになっており、サブテーマとして、(1)「宇宙、生命と情報」、(2)「人生のわざと智恵」、(3)「循環型社会」の三つが想定されている。高度経済成長の絶頂期に迎え、「人類の進歩と調和」を高らかに謳い上げた『大阪万博』と今回の『愛・地球博』とを比較してみると、いろいろと考えさせられる点が多い。

 なんと言っても『大阪万博』は、6カ月間で6400万人という世界の万博史上最高の入場者数を集めたのであるが、その展示の中心は、万博前年にアポロ11号が採取してきた「月の石」を売り物にした「アメリカ館」をはじめとする数十カ国もの国威発揚を目的とした奇抜な巨大パビリオンと、これまた数十もの大企業による工夫を凝らした無限の希望に満ちた未来を謳歌するパビリオン群からなっていた。

 ところが、今回の『愛・地球博』はどうだ。参加国数こそ120カ国と倍増しているが、自前でパビリオンを建設した国はひとつとしてなく、皆、博覧会協会(ひいては日本政府)が用意した巨大パビリオンの「店子」となって「形だけ参加」するだけである。企業も、地元のトヨタやJR東海を除けば、公的な色彩の強い電力やガス事業を含めてもほんの数社程度であり、有力企業のほとんどが出展した『大阪万博』からは明らかに見劣りがする。

 しかし、『愛・地球博』のほうが魅力があるというか、将来への展望の可能性がある点がひとつだけある。それは、NGOを取り込んで、市民参加型の万博にしようと努力している点である。

 神道国際学会の役員が関わっているものだけでも、薗田稔会長と米山俊直副会長が中心的な役員を務められている「社叢学会」が『森に生きる日本文化』をテーマに、東ゲート付近の「千年の森」や、地球広場前の高さ二十五メートルのツインタワーの上に作られる「天空の森」を造成し、神宮の式年遷宮事業の端緒である「御杣山神事」のハイビジョン中継などが企画されている。

  また、この私が実行副委員長を務める諸宗教協力による『こころの再生・いのり館』が地球市民村内に、五月の一カ月間開設される。ここではパビリオン展示をはじめ、少数民族を招いた国際シンポの開催、大地の広場での各種体験プログラムの実施など、楽しさ「てんこ盛り」の企画であり、読者の皆さんも万博見物に訪れされたら、ぜひお立ち寄りいただきたい。

 今回の『愛・地球博』が目指すものは、40億年という悠久の年月を生き抜いてきた生物界の智恵である「連続性」と「多様性」の尊重である。残念ながら、現在の世界宗教の主流である「啓示宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などの一神教)」の考え方から導き出されるのは、「非連続性(=神と人とは異質な存在)」と「排他性」であるが、それだけでは、地球環境の維持・改善などは不可能であるということを気づく機会になればよいと思っている。その意味でも、「連続性」と「多様性」をその特徴にしている宗教である神道こそ、21世紀初の万博を意義深いものにする最適な宗教だと思う。



Copyright(C) 2005 ISF all rights reserved
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。