神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
伊勢本街道を歩く @  暗 峠
吉井貞俊氏

   大阪から奈良へ行く峠道は数多くあるが、その中にあって、この暗峠は大阪の玉造を基点とする奈良街道の本命で、かの芭蕉も越えて一句を残している。この坂を登っていった昭和45年の春、丁度その時、麓の小学校に通う生徒たちの下校どきに当り、一緒に登っていったが、その子、次の遷宮に合わせてここに来た時、聞くともう既に学園前で花屋を営んでいるとの事、その思いがけない変化に驚いたが、考えてみると20年後というからそれは当り前のこととも言い得る。この様なことを繰り返して、このたびは62回という。一口に62回といってもピンと来ないが、その歴史は途中室町時代の百年間に亘る空白時代を追加すると、実に千三百年の星霜を送り迎えた事になり、それはつまり日本の國柄の形成、その骨格を如実に物語るもの。それを実地に見極めるため、これから伊勢まで歩いてみようとする気概を共に感じていただきたいと思う。
(絵・文とも吉井貞俊:絵は本誌に掲載)

 本会会員吉井貞俊氏は現在、兵庫県西宮市に在住し、西宮文化協会会長をしているが、もともと伊勢の出身で、猿田彦神社の社家である宇治土公家に出生した方。氏はその因縁をもって、昭和48年の第60回正遷宮の際、大阪から伊勢まで伊勢参宮本街道を踏破し、さらに平成5年の61回の時にも同じ道筋を歩いたと聞いている。
 そして現在、次回の正遷宮を目ざして、3回目の本街道歩きを始めたとのこと。今号から氏の、道筋のスケッチと随想を連載、紹介しよう。

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