第18号 11月15日刊行 神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 大國魂神社 宝物殿

闇夜祭に渡御する神輿八基と大太鼓
味わい深い美をとどめる御神宝類なども



 景行天皇の御代、大國魂大神(「古事記」の大国主神)の託宣により創立されたと伝える関東有数の古社。大神は武蔵の国魂として仰がれる。
古く武蔵国造が祭務を掌り、国府が当地に置かれてからは国衙の斎場となり、国司が奉仕した。やがて武蔵国内の主な諸神も配祀される(六所宮)。武蔵総社といわれる由縁だ。また、府中の地名にも国府としての由緒を留めている。
 創立に由来する5月5日の例大祭は「闇夜(くらやみ)祭」としてあまりにも有名だ。御本社と御霊宮および六所各社それぞれの神輿が、六張の巨大な御太鼓とともに御旅所に渡御する。闇夜の神幸は、現在では夕方から開始されるが、相前後する数日間の諸祭とともに、大変な賑わいとなる。

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 宝物殿には、この例大祭に渡御する神輿と御太鼓が納められている。入館してすぐ、一階に並ぶ八基の神輿は壮観だ。
 二階には御神宝類が収蔵・展示される。国重文の「木造狛犬」や、重要美術品の「木彫仏像」五体、「古鏡」四面、「古写本」三種などは、歴史的な価値にとどまらず、それぞれに味わい深い美しさを醸し出しており、見るものに感銘を与える。
 うち、一対の「狛犬」は運慶の作と伝えられる逸品。また青銅製の「古鏡」は梅や橘、桔梗、牡丹、双鶴、蝶、鳥など装飾に凝っている。三種の「古写本」は兵法や論語の写本だ。「木彫仏像」は如来三体、菩薩一体、天部一体の計5体。30数センチと小ぶりだが、平安末の円満で穏やかな、いわゆる藤原仏の特徴をとどめる。この仏像五体は六所宮の本地仏と伝えられている。
 ほかにも徳川将軍15代のうち12代による寄進状、刀剣類、さまざまな神宝類が陳列され、武家からの尊崇も篤かったことが窺い知れる。
 宝物殿は昭和49年、氏子崇敬者の絶大なる奉賛により完成したもの。今でも「奉賛会」や「氏子青年崇敬会」が活発な活動をみせるなど、古代から現在に至るまで、地元民衆の大國魂大神に寄せる思いには熱いものがある。


▼日・祝・祭礼日に開館
▼10時から16時
▼200円
▼東京都府中市宮町三3-1・大國魂神社境内
▼電話042(362)2130


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