第18号 11月15日刊行 神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道国際学会たより


第12回神道セミナー
「映像で見るお地蔵さんと地域社会
 −民間信仰共同研究会7年の歩みから− 」
平成20年2月24日神戸市・甲南大学にて開催

※詳細は決まり次第ホームページにお知らせする



杭州で日中交流1400年記念国際シンポ開催



   9 月15・16両日、中国浙江省杭州市で遣隋唐使1400年記念国際シンポジウム『東亜文化交流の源流』が開催され、日中両国はもとより、韓米露英の6ヶ国から百名を越す研究者が一同に会する国際学会であった。
   今年は、推古天皇15年(607年)に、小野妹子が隋の煬帝に対して「日出づる処の天子、日没する処の天子に書を致す」という国書を奉じてより、ちょうど1400年目に当たるが、このシンポジウムは、本年5月に大阪の住吉大社で開催された日中交流1400年記念国際シンポジウム『遣隋使遣唐使がもたらしたもの』を受けて、浙江工商大学日本文化研究所の主催(協力=中国日本史学会、後援=日本国際交流基金)によって開催された学術性の高いシンポジウムである。
  日本からは、前駐中大使の阿南惟茂氏、中西進奈良県立万葉文化館長、村井康彦京都市美術館長らをはじめ考古学から民俗学に至るまで、各地の大学教授が多数参加したが、宗教界からは、天台宗典籍編纂所の野本覚成編輯長、住吉大社の高井道弘権宮司、金光教泉尾教会の三宅善信総長が参加した。
   9月15日に行われた開会式(会場は杭州湾ホテル)では、主催者として浙江工商大学胡祖光学長が歓迎の挨拶を行い、中国日本史学会の湯重南会長が開会の辞を述べて始まった。まず、最初に阿南惟茂氏が『現代の遣唐使』と題して、いわば"初代"駐中大使とも言える小野妹子を取り上げて、外交交渉の意味について講演を行い、続いて、中西進氏が『遣外使、第三の積荷』と題する人間や文物以外の伝承物について講演した。
   その後、ABCD4つの分科会に分かれて、日中韓米露5ヶ国の研究者がそれぞれの研究成果を発表した。天台宗の野本覚成氏は、D分科会で『七巻本「妙法蓮華経」の日本請来』と題し、それぞれ違う時代に伝わった法華経テキスト間の差異について、最新のコンピュータ検索技術を用いた研究成果を発表した。住吉大社の高井道弘氏は、B分科会で『遣唐使と書芸の進化』と題して、唐代の書家が日本の書道確立にどのような影響を与えたかを陰影を多数比較しながら解説した。
  16日は、前日に引き続き、EFGH4つの分科会に分かれて研究発表が行われた。大阪医科大学の非常勤講師でもある神道国際学会常任理事の三宅善信氏は、F分科会において『遣隋唐使と伝染病』と題して、遣隋唐使が日本に伝えたものは、経典や仏像といった「物(もの)」や、漢字や律令制度や宗教といった当時の日本が「先進国」中国から積極的に導入しようとした「事(こと)」だけでなく、天然痘をはじめとする数々の伝染病といった「好ましからざるもの」も伝わったこと。また、そのことが後々の日本文化や宗教に与えた計り知れない影響について、最新の研究成果を交えて、IT映像を駆使して紹介し、「遣隋唐使研究に新しい視野を拓くもの」として、各国の研究者から大いに注目を集めた。
   この日の午後は、韓国の梨花女子大学の申N植名誉教授が『新羅遣唐使の歴史的役割』と題して、また、村井康彦氏が『遣唐船から唐商船へ』と題して記念講演が行われ、その後、「学会展望」と題して、主催者の王勇浙江工商大学日本文化研究所長の進行で、欧米各国の碩学から、「遣唐使の研究はひとり日中間の歴史研究としての視点だけではなく、この両国に密接に関連する百済・新羅・高句麗・渤海は言うに及ばず、アジア史全体の中で大きな影響を与えるものである」という趣旨のディスカッションがなされて、2日間に及ぶ国際シンポジウムが閉幕した。




ラダの中国印象記


 私は随分前から中国に行く夢を持っていました。今回やっとこの夢が実現しました! 浙江工商大学日本文化研究所のおかげで…、神道国際学会のおかげで…、そして天神さまのおかげで…。
 903年に亡くなった菅原道真は、天満天神となり約300年後の1241年に唐に渡り、径山の無準禅師のもとで修行したという神話があります。径山は杭州の近くにあるので、私がここまで来られたのも、私が専門として研究した天神さまのご縁だと思いました。
 杭州の空港での第一印象は、暖かくて海の臭いがしたことでした。海まで遠いと言われましたけれども、ロシアから来た私の目で見たら近いです。
 シンポジウムには、多くの国の先生方がいらっしゃいましたが、驚いたことに、その参加者がみんな日本語で話しあったのです。杭州の4日間、ずっと日本語だけでした。
 毎日おいしい中華料理をたくさんごちそうになりました。ホテルで同室になった方は、中国に留学している日本女性で、中国のことをいっぱい教えてくださり、本当に楽しい時間を過すことができました。大勢で河坊街に言ってお茶を飲みながら杭州の夜を楽しんだこともありました。
 シンポジウムでは、聞きたい発表がたくさんありましたが、時間的に重なったりして、聞きたくても聞けず残念な思いをしました。でも、ずいぶん刺激を受けました。特に阿南先生と中西先生の講演が勉強になりました。それに、今まで論文を読んだだけの方と直接、会うこともできました。ロシアから参加したのは私一人なので、ロシア代表者として大変緊張してしまいました。
 4日目は杭州観光でした。非常に歴史が長い町ですが、モダンに見えます。日本と同じような物がたくさんありますが、細かい違いを沢山重ねると結局、まったく違うものとなります。これは料理、食べ方、建築、服、化粧スタイルなど、どこでも現れています。
 私にとってシンポジウムはどんな場面でも面白くて、勉強になりました。最後にもう一回、主催者に感謝の意を表したいと思います。

       (フェヂアニーナ・ラダ=神道国際学会ロシア連邦事務所事務主任)

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