第18号 11月15日刊行 神道国際学会会報:神道フォーラム掲載

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『皇祖神饒速日大神の復権』   大野七三 
国重要文化財『先代旧事本紀』に注目

   『記紀』と並んで三大古文献と言われた『先代旧事本紀』は、江戸時代の一部の国学者が偽書と断定したことから、これまで歴史界、神道界でもほんとんど顧みられなかった。ところが、昭和60年度、天理図書館蔵『先代旧事本紀』が国の重要文化財に指定され、その後、多くの歴史界の権威者たちにより『先代旧事本紀』の重要性についての著書が出版されるようになり、やっと本書の価値が見直されるようになったようにみうけられる。
 私は早くから『先代旧事本紀』に関心を持ち、読んでみたいと思って捜してみたが、普通の書店には無く、図書館で国史大系の『先代旧事本紀』をみつけ、これを借りて読んでみたが、解説もなくただ漢文で書かれてあって、読むのに苦心した。その中で、巻三の饒速日尊の東遷伝承と巻五の饒速日尊の神裔尾張氏、物部氏の系譜に特に興味を持った。この記述が真実ならば『記紀』の記述を覆す重要なことである。そこで、出雲を始め九州全域、畿内その他全国の神の御神陵、古代に創建された神社、古代祭祀遺跡などを隈なく数度廻ってみて、神の実在と饒速日尊の伝承は史実であることを確かめることができた。
  そして、天理図書館蔵『先代旧事本紀』を底本として漢文を和文に直し訓註をした『先代旧事本紀―訓註』その他を出版することができた。
  これらの拙著をご覧頂ければ、『先代旧事本紀』の研究と日本建国の基礎を作られた皇祖神饒速日尊の復権なくしては絶対に我が国の建国史、古神道の真実の解明は不可能であることがおわかり頂けるものと思う。

▽213頁、2100円 ▽批評社=03(3813)6344

大野七三(おおの・しちぞう)=1922年、埼玉県狭山市生まれ。元・狭山市文化財審議委員、同市史編纂委員、同市美術工芸専門調査員。著書に『狭山市の社寺誌』『河鍋暁斉|逸話と生涯』『先代旧事本紀 訓註』ほか多数がある。

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