第17号 9月15日刊行 神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 三嶋大社 宝物館

工芸技術の粋を集めた国宝「梅蒔絵手箱」
価値に秀でる武家関係文書も多数

 「三嶋」はもともと「御島」のことで、伊豆諸島の噴火と造島は三嶋大明神の神業であったという。そしてその活動が顕現するたびに大明神の神階は上がり、「延喜式」では名神大に列格している。火山列島・日本、そのなかの富士山から伊豆半島、伊豆諸島にかけての「富士火山帯」。自然の絶大な威力への畏怖と尊敬を考えれば、三嶋大明神への讃仰は当然のことかもしれない。
 伊豆に流され、伊豆で兵を挙げた源頼朝が深く崇敬して以降、武家からの尊崇がことのほか篤い。頼朝は覇業報謝のために社領・神宝を献じ、社殿の造営を行なっている。
 そうした関係で宝物館には、歴史に名をとどめる多くの武士からの奉納品、関係文書が多数、収蔵・展示されている。例えば三嶋大社及び神主(宮司)矢田部家所蔵の古文書は約1500点。そのうち近世以前の約600点は、「三嶋大社矢田部家文書」として重文指定となっている。
  「三嶋本」と呼ばれる「日本書紀」も貴重な古写本で、応永三十五年(1428)奉納。他に三嶋暦や文人の書画、刀剣など、様々な文化財が伝存する。
しかし目玉はなんと言っても国宝の「梅蒔絵手箱及び内容品一具」であろう(通常の展示は復元模造)。化粧用具一式を納めた手箱であるが、鎌倉時代の高い蒔絵技法、最高工芸技術の粋を集めた優美なもので、頼朝の室、北條政子の奉納とされる。箱の外面は金沃懸地(きんいかけじ)で、蓋には八重、一重の梅樹、空の飛雁、岸辺の雁群が描かれている。白楽天の詩の一編から「栄」「伝」「錦」「帳」「雁」「行」の六文字が引かれ、諸処に配されているのがおもしろい。また、当時の材料と技法による復元製作の様子をビデオで見ることができ、興味深い。
 ほかにも、神社通史を示す展示があり、「一遍聖絵」の三嶋社参詣の様子を復元したジオラマ模型、三嶋大社の祭事や歴史、宝物が分かる情報検索のタッチ・パネル、神宮式年遷宮で調進された御神宝などもある。
 二階が展示室。一階にはミュージアム・ショップのほか、絵画・工芸展示や各種教室として一般に利用できるギャラリーも併設しているのが特徴だ。


▼9時から16時半(入館は16時まで)。例祭期間や正月三が日は延長
▼展示替で不定休館あり
▼一般500円、大高生400円、中小生300円
▼静岡県三島市大宮町2−1−5(三嶋大社境内)

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