神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 箱根神社 新宝物殿

いにしえに感得された三所権現
箱根信仰の奥深い様相を見る

 今年元旦に一般公開の始まった真新しい新・宝物殿。箱根神社は御鎮座1250年式年を迎えており、記念事業の一環として新築・開館した。同神社の宝物収蔵・展示の施設としては、古く明治40年、宝物殿が開設されており、今年はその100周年にも当たる。
エレベーターなどバリアフリーに配慮した鉄筋コンクリート造りの三階建。入口はお宮の施設にふさわしく朱礼門で、しっとりと森厳な神域に朱塗りの梁や柱が映えている。一階は受付、二階が常設展示室。三階では常設とともに随時、企画展示も催される。
    草創、最盛、再興期に分けて同神社の歴史と文化が概観できるよう、彫刻や絵画、古文書、工芸品はもちろん、写真パネルやビデオ映像などで展示に工夫を凝らす。
箱根権現中興の祖≠ニ崇められる万巻上人の坐像(一木造、重文)は平安初期の作。関東でも最古に属する逸品という。上人が箱根山中で三所権現を感得、当地に勧請したのは天平宝字元年(七五七)のことだった。権現の御影や縁起絵巻などに、古代に遡る箱根信仰の奥深い様相を垣間見ることができる。
意表を突くのは親鸞聖人像。自作と伝える木造坐像で、聖人が関東から京都に帰る途次、箱根権現の霊告を感じ、後々まで自身の代わりにこの霊山を見守ってほしいと願って刻したものという。諸典籍からも聖人が上洛のため箱根を越えたのは史実なのだ。
    ほかにも箱根権現とは切っても切れない小田原北條氏の五代に亘る崇敬を示す書状、箱根用水に関する資料なども展示。パネル写真とビデオでは、深い山と芦ノ湖の神域で繰り広げられる四季折々の諸祭を紹介する。「日本三大仇討」の一つ、後に「曽我物」として文学や芸能に採り入れられた曽我祐成・時致兄弟の悲劇は伊豆・箱根が舞台なだけに多くの関連資料を収蔵する。
    初公開となった木造の男神・女神両坐像は格調高い表情をおのずから備えて静かに座す。かねてより、鎌倉期の三所権現の根本像として展示している独特な表情を持つ三立像(男神、僧形神、女神)とともに必見だ。


▼9時から16時半(入館は16時まで)
▼中学生以上500円、小学生300円
▼神奈川県足柄下郡箱根町元箱根80-1(箱根神社境内)
▼電話:0460-83-7123

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