神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
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ニューヨーク便り

英語による神道講座を開催

 ISFでは、5月25日(金)に「英語による神道入門講座」を開催した。英語の入門講座はISFが設立されて以来初の試み。参加者は多くのアメリカ人を含む25名で、太田垣オフィサーのNY生活の話から始まり、和やかな雰囲気で進められた。
 テーマは「『千と千尋の神隠し』に観る神道の世界」で、宮崎駿氏のアニメーションが国境を越え誰の目をも楽しませ、そこから神道の神を自然に吸収することができるのではないかという狙いから設定されたもの。宮崎駿氏の映画には常にエコロジー、ヒューマニズムという現代社会へのメッセージが込められており、さらに『千と千尋の神隠し』には日本の八百万の神様が面白く表現されていたり、川、岩、山など神様の現れる場所が描かれている。自然崇拝、つまり神道の要素に溢れている映画なので、参加者は楽しみつつ理解していたようだ。
 太田垣オフィサーは「昔は神様と人間のコミュニケーションは多かったが、現代では神様は忘れられた存在となり、それと同時に人間の自然に対する想い、更には生きる力まで喪失してきているという切実なメッセージが込められている」とこの映画のエッセンスを説明。さらに、日本人は自然や神様をどのように受け止めているのか、今後、神様との共存は必要か、主人公の千尋のような子供が自分の力を発揮できる自然空間、こころの拠り所はつくられるかなどと、活発な意見交換がなされた。参加者は現在の日本社会、宗教を想定した上で、アメリカ社会と日本社会の自然に対する見方を比べたり、宗教への考えを述べていた。講座後の懇親会でも日米双方の活発な文化コミュニケーション風景が見られた。
 会のあと、アメリカ人参加者から「日本人が自然や物の中に多くの意味を見出していることを知って嬉しかった」「日本の神様はフレンドリーで近づきやすい」、また日本人の参加者からは「時代は変わってもモノに魂が宿ると言う考えからは離れることが出来ないだろう」などのコメントが寄せられた。
 太田垣オフィサーは「初めての試みで心配もあったが、有意義な催しとなった。今後もこの講座が参加者にとって互いの宗教や文化、習慣を知り、国境を越えた人間関係が円滑になるような機会となるように、役割を果たしていきたい」と意気込みを述べた。

   6月3日(日)には、ニューヨークのセントラルパークで「ジャパンデー(JAPAN DAY)」が開催された。この催しは、日本の食文化や物品を紹介し体験するお祭りで、昨年3月に就任された在NY総領事の櫻井本篤氏の呼びかけにより、日本企業や日系社会が協賛して企画されたもの。今年が初の、大規模かつ全く新しいイベントとなった。
 ISFは祭の開幕前に、ステージの安全祈願とセントラルパーク内を巡回する神輿に神様をお移しする神幸祭を斎行。ステージには和太鼓が並べられ、スタッフの意気込みと成功への祈りが感じられた。神輿は個人が所有するもので、参列者たちは、日本の伝統のシンボルともいえる神輿を個人でアメリカに持ってこられたという驚きと、セントラルパーク内を神輿に乗って日本の神様が巡られるということに、新鮮な感動を持ったようだ。
 ISF太田垣オフィサーによる祈願の後、セントラルパーク内をルートとする短距離マラソンとステージでの舞台パフォーマンスという両イベントで祭は開幕、最後までにぎやかに祭りは続いた。緑豊かなセントラルパークは、日本の祭を行なうのに相応しく、当日の天気予報では朝から雨とされていたが、夜まで好天が続いたのも自然の神様の恩恵をうけたのかもしれない。「ジャパンデー」は日本の素晴らしい伝統文化及び現代のサブカルチャーをアメリカ社会へ発信し、また、多くの日本人にとっては郷愁を発散できる場として新しい文化交流拠点を築いたといえる。
    なお、太田垣オフィサーがNYに赴任して以来、兵庫県や尼崎市の関係者からたくさんの応援が寄せられている。その一つが株式会社日興商会からニューヨークISFセンターに贈られた多量の文房具類。藤縄健一社長は「特別大げさな偉い精神でやったことではありません。地元・尼崎の神主さんがニューヨークに行くと聞いて、『頑張って活躍してください』との激励の意味でご提供もうしあげたことです」と控えめに話している。


※写真、今後の予定などは ISFホームページに掲載。



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