神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
読者からのお便り

亀 戸 天 神 の 神 忌 祭

   3月25日は旧暦の2月25日、菅原道真公のご命日に当たり、亀戸天神社では、夕刻より境内には松明が灯され、別名「葬式まつり」「松明祭り」とも呼ばれるめずらしい神事がおこなわれます。
   午前中の雨もお昼からあがり、風もなく春をつげるようなおだやかな天候となりました。
以前、奈良の春日大社の若宮御祭りの夜中の神事を拝観した時、お祭りはお昼の賑やかなものばかりでなく、夜の厳かなお祭りがあるのだと初めて知って感動したことが忘れられなく、電車で行ける範囲だし、行って見ることにしました。
   午後6時になり、社務所より白装束の神官達が本殿に向かい、普段閉ざされている御神体がおさめられている扉が御開帳され、祓い清められ、神饌を奉納したあと、神前から道真公の御神霊を奉持した絹垣を神官たちがお運びになり、およそ50人の氏子や近隣の子供たちのかざす竹松明の灯りで一緒に境内を巡りました。
   静寂の夜の闇に行列しながら神官が唱える『おお〜』という警蹕の声と燃え立つ松明は全てを清め、荘厳な雰囲気がありました。
   飛び入りで参加した私も松明を持つことができましたが、道真公がお通りになる道をしっかり灯さなくてはという引き締められるような気持ちにさせられました。このままだと火があがってきて手元まで燃えてしまうかもという心配もなく、およそ四十分くらい境内を練り歩いて、無事神前にお戻りになりました。本殿にお見送りした後もなんとなく去りがたく、ずっといつまでもいたい気持ちかられました。本殿の前でしばらく去らずに、目を閉じていらっしゃる方達も何人かいました。
   ごった返す人混みもなく、ゆっくりと見守ることができた神事、清々しい気持ちで帰路につき、その日は心静かに眠ることができました。 (E・M)



紀 元 祭 雑 感

   いつの頃からか神社を巡るようになり、そこで感じられる清浄さや緑の杜の心地よさをありがたく思っていたが、所詮都会生まれの都会育ち、産土神社や氏子としての祭などあるはずもなく、ある種のもどかしさも感じていた。一人の人間として参加できる儀式や祭はないものか、と考えて行き着いたのが紀元祭。いつもは職場との関係で行けないが、今年はたまたま時間が空き、喜び勇んである神社へと向かった。
   当日はかなり朝早く出た。いつ行っても静寂で心洗われる神社なので、すがすがしい一日が始まると思ったのだが、鳥居の前には右翼の街宣車がズラリ、その筋の人たちがビラをまいていた。まったく予想しない事態で、いきなり先制パンチを食らう。境内では「イッチ、ニィーッ、イッチ、ニィーッ」と行進している輩も含めて、制服姿がやけに目立つ(国を思う気持ちはありがたいが、逆効果では?それとも効果無視のパフォーマンス?)。
内拝殿に入り、一番前に座ろうと思ったが慎ましく少し後ろに座る(実はあまりに寒いので、火鉢のそばに移っただけ)。外拝殿では仏教系らしい人たちが何やら唱えているが、私には意味不明で、祝いに来たのか邪魔しに来たのかもよくわからない。とにかく騒々しい。相変わらず「イッチ、ニィーッ」も聞こえる。
   ともあれ、そんな中、儀式が始まった。神饌を供し、宮司の祝詞に続き、祭壇に御幣物を奉るなどの儀式が、古式ゆかしく厳かに執り行われた。とはいえ、祝詞奏上の際、何度か咳払いしたり勅使の名をしばらく思い出せなかったりしたこともあり、荘重さに欠けると感じた人がいるかもしれない。
   巫女による御神楽は修練の賜か、美しいなかにも厳かさが感じられとてもよかった。こういう一生懸命な姿、またそれに感動するのが日本人らしいんだろうなと思う。式典後も写真撮影でモテモテであった。しかし、ここがそうだというわけではないが、この十年ほど、巫女たちはますます大型化し(失礼)、しかも足が長くなってきた。生活の洋式化もあり、立ち居振る舞いが根本的に違ってきたようで、本来の舞からズレていかないよう切に願う次第である。
   次いで、君が代斉唱に移る。朗々というほどではないが、わが職場での惨憺たる状態よりはよかったと感じる。その後、玉串の奉納などがあったが、全国から何千人も参列しているせいか、終わり近くになるとさっさと帰る人が続出する。どうにも騒々しいが、これも現代風か。
   出口で直会を頂いて式から解放され、いろいろな思いが去来する。総じて、「日本って本当にいいな」とまでは思わなかった(そう思える儀式となるよう、主催者・参列者共々心を合わせたいものである)が、伝統、文化のすばらしさが残っていることを実感できたことだけは確かだ。できれば静かに厳かに感じたかったと思いながら、相変わらず「イッチ、ニィーッ」と行進している連中を横目に見て、帰路に着いたのであった。 (上山政木)

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