神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道国際学会たより


● ロシア国立宗教史博物館 ●

 梅田善美・神道国際学会理事長が、サンクトペテルブルグ市にあるロシア国立宗教史博物館を訪れたことは、昨年の神道フォーラム11月15日号の「日々雑感」でお知らせしたとおりだが、その後、同館の東洋宗教史部の主任研究員であるスピリドノフ・グリエーブ氏から同博物館についての一文が届いたのでご紹介する。
    
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 サンクトペテルブルグにある国立宗教史博物館は、さまざまな民族と時代の宗教に関する、ロシア連邦唯一の研究機関であり、多くの展示品を所蔵している。
 その歴史は、1928年にソ連の科学アカデミー付属民族学研究所の有名な民族学者・言語学者のボゴラズ・タン氏が、レニングラード市で宗教史展覧会の開催を提案したことから始まる。1930年4月16日、ボゴラズ・タン氏の指導のもと、エルミタージュ美術館の冬の宮殿において、宗教史に関する展覧会が開かれた。そしてこの臨時展覧会が非常に好評だったため、宗教史博物館が創立されることになった。
 1932年11月15日に、ソ連科学アカデミーにより、カザンスキー(カザーニ市聖母子像記念)大聖堂に宗教史博物館が設置された。1954年に「国立宗教史と無神論博物館」と改名されたが、1990年には元の歴史的な名前に戻された。2000年に、ポチャムスカヤ通りに移転し、現在にいたっている。この建物は著名な建築家により旧帝政時代に建てられた郵便局の一つである。
 国立宗教史博物館のコレクションは、紀元前七世紀から現在まで、18万3千点を超える収蔵品がある。シベリアのシャーマニズム、古代の神々、エジプトのピラミッドと葬式、ギリシャの神々、神殿、祭、ローマ古典の神々、古代イスラエルなどの古代宗教に関する展示品から、早期キリスト教、ロシア正教聖人たちの生活、教会と修道院、ロシアでの神母(聖母マリア)崇拝、ロシア正教史の資料や展示品、ヨーロッパでのキリスト教史に関する展示品、有名な画家の書いた描いたイコン画もあり、銀製品も当館が誇る収蔵品である。
 現在は《イスラム》《阿弥陀如来極楽浄土》《東洋の宗教》の展示室を作成中で、《東洋の宗教》にはヒンズー教、仏教、道教、儒教、神道が含まれる。日本のコレクションには置物、掛け軸、版画、焼き物、仏壇、仏像が含まれ、19世紀の象牙製のスサノオの置物、19世紀の鋳物の稲荷、18世紀の慈悲観音の掛け軸、17世紀の地蔵の掛け軸、1802年の真利支天の掛け軸、1701年の嵯峨五台山清涼寺の焼鎮作の釈迦如来の掛け軸、シーボルトのコレクション内の八幡神の放生会(十九世紀の銅版画)などがある。また博物館は、絵画や彫刻の修復もてがけていて、すでに専門家により4680点以上が修復された。
 博物館が誇るのは、宗教と無神論についての世界最大の蔵書である。十八万五千冊以上の蔵書は、キリスト教(カトリック教、プロテスタント教、ロシア正教)、ユダヤ教、仏教、道教、神道、イスラム教などの文献の他、歴史、考古学、民俗学、哲学、社会学、教育学、心理学美術史の文献を含み、ロシア語はもちろん英語、フランス語、ドイツ語、中国語、日本語にまで及んでいる。
 毎年、国際シンポジウム「宗教問題連続講演会」を行っており、2006年11月は「巡礼現象」をテーマとして開催した。発表者のなかに、日本人の姿がなかったのが残念であった。ほかには、《東洋宗教》《全世界の宗教》《協会の美術》《ロシアイコン画》《人間と神》などのテーマで講義を行っている。現在、神道国際学会の協力で、神道関係の展示品がしだいに充実してきているところである。


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「住吉津より波濤を越えて」
  大阪・住吉大社で日中交流1400年記念シンポ 5月8、9日に


 遣隋使・遣唐使の意味を探る 神道国際学会も共催

  聖徳太子による遣隋使派遣から今年は千四百年。この節目を記念する日中交流1400年記念シンポジウム「住吉津より波濤を越えて―遣隋使・遣唐使がもたらしたもの―」が5月8、9両日、大阪市住吉区の住吉大社(真弓常忠宮司)で開催される。往時の人々は命がけで、何を目指して大陸に渡り、何を日本にもたらしたのか――日中交流の源流、遣隋使・遣唐使の意味を問い直す。
  主催は日中両国の各界人らでつくる同シンポ実行委員会。共催は神道国際学会のほか、日中科学技術協力会議、浙江工商大学日本文化研究所日本語言文化学院、四天王寺国際仏教大学、四天王寺、住吉大社。後援は外務省、中華人民共和国駐大阪総領事館、大阪府ほか。
  初日の8日は午前9時から開会式。このあと午後にかけ、記念スピーチをはさみながら基調講演が三題。王勇・浙江工商大学教授(中国)が「日本に骨を埋めた鑑真」、東野治之・奈良大学教授が「唐に渡った人々」、和田萃・京都教育大学教授が「遣隋使と大化の改新」と題して話す。アトラクション(二胡演奏)に続いて午後3時過ぎからパネルディスカッション。夕方6時から晩餐会(半能「石橋」なども)。
  2日目の9日は午前9時から遣隋使・遣唐使慰霊祭。同9時半から研究発表。午後1時から住吉大社の卯之葉神事に参列し、同神事に続く恒例の舞楽鑑賞と呈茶も。同三時から全体討議、同四時半から閉会式。なお研究発表は日中の研究者十人の登壇が予定されている。
  参加料は、別途の昼食希望や晩餐会参加を除き1000円(資料代)。葉書もしくはFAXによる申し込みで、後日参加証を送付。
  問い合わせは実行委員会=〒558―0045 大阪市住吉区住吉2-9-89(住吉大社内)、電話06(6672)0753、FAX06(6672)0110。



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