神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 湯島天満宮宝物殿

梅香る湯島の天神さま

天神信仰の発展示す天神図像の数々

  「東風(こち)吹かば匂いおこせよ梅の花――」。新年に入り、間もなく梅香る季節。「湯島の白梅」で名高い湯島天神こと湯島天満宮(東京都文京区)でも2月上旬から梅まつりが催される。そして「天神さま」といえば学問の神様$寥エ道真公。受験シーズンまっただ中の今、同天満宮にも連日、入試を間近にひかえた若者らが合格祈願に詰めかけている。
 菅公一千百年(平成14年)の記念事業として、同7年に新社殿がお目見えしたのに続き、同11年、参道沿いに鉄筋二階建て、寝殿造り風の宝物殿が開館した。その風格ただよう優雅な姿は、総檜造りの明媚な新社殿との調和合致を考えてのものという。
 宝物殿の2階は神楽殿などで、展示は1階と地下の二フロア。正面を入ると本社神輿、町内神輿、鳳輦が鎮座する。
 地下へ下ると宝物や奉納品が並ぶ展示室。「龍虎図」衝立や「湯島天神門前総図」、江戸前期の「天神面」(出目長吉作)……。今の「宝くじ」に相当する「富突」(「富くじ」とも)に使われた「金箱」も。江戸時代、湯島天神の「富突」は谷中感応寺、目黒不動尊とともに「江戸三富」と言われ、庶民も熱狂したという。傑出は、江戸末から明治前期に活躍した浮世絵師・日本画家、河鍋暁斎による「野見宿禰と当麻蹶速図」と「入船図」の扁額。とくに前者は、菅公の祖であり、相撲の神様でもある野見宿禰が当麻蹶速を投げ飛ばすところで、同天満宮の宝物でも昔から優品とされていたという。
 興味深いのは、ずらりと並んだ天神図像の数々。菅公に対する「天神信仰」の歴史的な変遷、各地で発生・変化した諸伝説を反映し、様々な姿の天神像が発生した。「束帯天神」(写真)「渡唐天神」「綱敷天神」「柘榴天神」等々。菅公の生涯、伝説の由緒に思いを馳せながら、一つ一つの天神像を鑑賞したいところだ。
 菅公に縁深い「梅」に因んだ絵画等の収集にも力を入れている。画壇の重鎮、著名な画家の作品も多い。梅まつりの期間を中心に、これら収蔵画の特別展も例年、開催されている。

▼東京都文京区湯島3-30-1
▼電話03-3836-0753
▼9時から17時(入館は16時半まで)
▼一般500円、大・高生と65歳以上300円、中・小生200円


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