神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
新刊紹介

『幸せを呼ぶ感謝力――「おかげさま」の日本思想』  宮崎貞光著

感謝思想を受け継ぐために――
神の道、古道に通底する感謝の意味

    著者の近所に住む90に近い或る年配者は毎朝、神棚に向かい「ありがとうございます。かたじけのうございます。もったいのうございます」と、感謝の祈りを捧げているという。
 「おかげさま」も含めて、謝意とともに、じんわりとした余韻や、腹底に響く力強ささえも秘めた日本語の感謝の言葉。その言葉が伝えてきた意味合い、滋味、諸相を発掘していく。
神の道、古道に通底する感謝思想の探求のために、著者は黒住宗忠、中村天風、そして鈴鹿山系の山里で現在も修道生活を送る「ありがとうおじさん」の三先達をとりあげる。著者は、これら先覚者に感謝の意味と淵源を教えられるうちに、本居宣長の「カムナガラの道」に辿り着いたという。
 今日の日本、あるいは世界の危機的現実の中でこそ、感謝思想を復活させ、受け継いでいくことが何よりも求められることを、著者は力説する。
 心意気は壮だがガンバリズムのみで強調せざるを得なかった「道義」「国体」「太平」などの言葉に漂う空虚さを埋め、その理念の中身を明確にする。その方向性を示した著者のメッセージの書でもある。

▽B6判、202頁、1260円
▽イプシロン出版企画=03(5368)2327


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『大使が書いた 日本人とユダヤ人』  駐日イスラエル大使 エリ・コーヘン著

    著者は、日本人とユダヤ人は世界の民族間に平和のメッセージをもたらす使命をもった民族であるという。
 両民族の類似点あるいは相違点についてはこれまでにも様々なことが語られてきた。本書は、駐日イスラエル大使であり、かつ空手をはじめとした日本の武道を愛してやまない知日家であるユダヤ人の書いた「日本人とユダヤ人」論である。
 21歳で空手に出会って以来、政治家として実業家として活躍する一方、日々、武道の修行を続けてきた。というよりも、著者にとっては、仕事、日常生活、武道による鍛錬は不即不離の関係にあるようだ。
 現職による滞在も含めて、ながく日本と付き合ってきた、その文化体験や人々との出会いの中で、著者が発見し、心の琴線に触れた両民族の共通点、絆が語られる。一見なんの接点もなく、固有に培われた文化と精神のなかに驚くような類似性があるという。
 一神教のユダヤ教と、八百万の神々を奉祭する神道との関係を中心に、人々の暮らしぶりなど、話は広範に及ぶ。著者のいうように、両民族の由来などを学術的に証明しようとするものではないが、人生を通じて得た実体験、驚き、感動が全体に溢れている。

▽四六判、223頁、1575円 
▽中経出版=03(3262)0371
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