神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道国際学会理事の「ホットな近況から」
アラン・グラパール 常任理事

神饌、料理……神道思想を背景とした日本の食文化
海外の日本宗教研究の第一人者 更なる研究へ意欲
 「若手研究者へ──漢・古文を含めた日本語の根本的な知識がまず必要」

    仏教、神道に限らず、日本の宗教に関する論文・著述を数多く有し、アメリカで学術関係の各賞を受賞するなど、海外の日本宗教研究における第一人者との声も高い。1997年、カリフォルニア大学サンタバーバラ校に神道国際学会の肝いりで「神道学講座」が開設されると、その初代主任教授に任命された。
    ここ数年、療養生活を続けていたが、ほぼ快癒した。ドクターから「飛行機もオーケー」の許可が下りるや、無理に抑えていた学者魂が一気に噴出。ほとんどその足で空港に向かい、「成田」行きに飛び乗って日本にやってきた。
    「アメリカでも、若くて有望な研究者はちらほら出てきている。だが、深いところまで掘り下げた優れた研究は、まだまだ多いとは言えませんからね」。今後さらに、新たな研究と論文執筆に取り組み、あわせて後進の育成にも力を注ぐ意欲を見せている。
    来春には、「山曼荼羅」をテーマに歴史・地理学的な視点を含めて論述した『マウンテン・マンダラーズ』をアメリカ・スタンフォード大学から刊行する。宇佐八幡信仰の形成・発展と英彦山修験への影響など、様々な事例をもとに、神道・仏教・修験道の関係性を文献研究と実地調査から多角的に捉え、実態を解明する。
    まもなくカリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授職は退官となるが、同校のリサーチ・プロフェッサーとして留まるとともに、研究拠点をハワイに移すことを検討している。
    今後の自身の研究課題の一つだとするのは、日本の食文化について。神饌に関する研究とも密接につながっている。「神道学者も案外に触れていないが、神饌はもちろん、日本の食文化には、神道の精神が現れているし、思想的な背景を持っている。神道研究において非常に重要なもの」と強調する。
    「神饌、料理、食文化としてのマナーなど幅が広いけれど、全国を歩いて、自分の目で見て、写真も借りて……。キリが無くて困ったことです」と笑いながらも、これからの研究活動を大いに楽しみにしているようだ。
    フランスに生まれ、国立東洋言語文化学院で博士号を取得。8年間にわたって京都大学、種智院大学で日本宗教を研究。アメリカに渡り、コロラド大学、コーネル大学、ハワイ大学などで教鞭をとる。カリフォルニア大学サンタバーバラ校宗教学部・東アジア言語文化研究学部教授。
    学生には、漢文・古文など古い典籍も含めた日本語の読解力を要請する。「日本語の根本的な知識、諸宗教が混淆した思想史的な状況が分るまでに数年かかる。それから細かい専攻を決めると遅い。ジレンマはあるが、日本研究には是非、必要なことですから」

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