神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道国際学会理事の「ホットな近況から」
茂木 栄 理事

 神事・祭礼に見る民俗文化を対象として、その調査・研究とともに、映像に記録する事業に長く携わってきた。大学院時代から続くライフワークの一つだ。
 「映像記録――それは貴重な民俗文化財の掘り起こしと、その価値を世に知らしめる強力な手段」と強調する一方、ビデオカセットの裏側にしみついた、語っても尽きぬ思い出に、つい戻っていきそうになる。祭礼現場の地元の人たちや撮影スタッフとの出会い、交流、そして泣き笑いのこもる様々な出来事……。だが数々のエピソードをうかがうのは別の機会にゆずるとして――。

    ◇ ◇

 DVD『日本の祭礼行事シリーズ』の刊行がいよいよ始まった。過去に撮影してきた膨大な記録の蓄積が新たな装いで集大成されたかたちだ。10年ほど前、同タイトルでまとめたビデオ(全15巻)の素材を、再編集・再構成を加えてデジタル化した。本シリーズでは制作指揮・構成を担当している。現段階の企画制作は自身の所属する國學院大學日本文化研究所と、映像事業で古くから協力してきた民俗文化財研究協議会、それに制作会社のウイング。日本文化の発信を意識して、ナレーションは日・英・中・仏・露・西の六ヶ国語のバージョンがある。
 第一集は【勅祭の伝統】と題して、「賀茂祭・葵祭」と「石清水祭」、そして「出雲の神在祭」「気多神社の平国祭」と続く。監修は本会の会長でもある京大名誉教授で秩父神社宮司の薗田稔氏。薗田氏は自身にとっての学問の恩師でもある。

最近の研究視点――
コモリの風土と
  国府の祭りの関係

 「薗田先生との出会いというのは僕にとって非常に大きいのですよ。先生がいなかったら学者を続けていたかどうか……」
 「学生運動」華やかなりし大学時代、仲間と前衛風の映画作りに没頭した。「『勉強ばかりしているのはカッコワルイぜ』という時代です」と笑う。
 比較文化を専攻。大学院に進んでからはとくに民俗学が専門となった。そして薗田氏の祭事研究の調査にしばしば同行した。「実地調査のなかで、学ぶ姿勢、対象を見る目、研究の態度などを自然と教えられたわけです」
 以来、花祭や霜月神楽、奄美地方の調査、そして大和地方の祭りと民俗の調査、さらには大和を見立てた全国の国府・総社の踏査、諸国「一の宮」祭祀の研究……と、研究テーマが定まっていった。
 現在は、薗田氏の研究を発展させたいと、「コモリ」の風土と国府の祭りとの関係に関心を寄せる。「祖先らはコモリの風土を国府においてどのように宗教的に意味づけたのか。そして、そこに生活しながら、祭事を通じて神観念というものをどう表現したのか――。日本人の心性や社会性の解明へと掘り下げられれば」と話す。
 「民俗学は別に物珍しいものにアプローチするだけのものではない。やはり、社会との関係性を軸にきちんと分析しなければならない。そうであってこそ民俗学が学問たるゆえんを持つわけですから」
 映像を撮る場合も、対象の「文化価値」を明確に意識し、目的を心に刻みながら作業にあたっている。


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