神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神社界あれこれ

神社新報六十周年を記念
熱田神宮で式典を挙行


神社新報紙の創刊六十周年記念式典が、七月八日正午より、愛知県名古屋市の熱田神宮を会場に挙行された。式典は、物故者への黙祷から始まり、小串和夫神社新報社長(熱田神宮宮司)が、六十年をふりかえって関係者への謝意と今後の協力を懇請して挨拶。矢田部正巳神社本庁総長と神宮大宮司(高城治延少宮司代読)の祝辞、事業報告、万歳三唱などのあと、祝宴に移った。出席者は約三百七十名。この日を記念して出版された『新版 国家神道とはなんだったのか』とPDF版「神社新報」については新刊。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

住吉大社の夏祭り―― 四十六年ぶりの神輿渡御の復活  (投稿)

 今年の梅雨は、とても長く、大阪では、漸く七月三十一日に開け、炎暑の夏がやってきました。ちょうど、住吉大社では、梅雨明けの日に夏越祓といって、「茅の輪くぐり」の神事が行われ、翌日の八月一日には、堺の宿員頓宮に神幸し、飯匙堀にて「荒和大祓」が斎行されました。その神幸の途中に、一級河川の大和川があり、今年、四十六年ぶりにその大和川の河中での神輿の受け渡しが復活しました。
 戦後、神輿の渡御につきましては、昭和三十五年を最後に自動車列に変わったものが、昨年、四十五年ぶりに、神輿を舁いで渡る古来の姿が復活しました。
 さらに、今年は、大和川の河中での神輿の受け渡しが続いて復活いたしました。三十度を越す炎天下のなか、神輿は無事、難関の太鼓橋を渡りきり、差し上げ、差し回しをしながら、紀州街道を南下し、大和川の河中では、神輿を大阪側から堺側の輿丁に無事に受け渡されました。最も深い所で一m五〇p以上ある中、輿丁は、賑賑しくも厳粛に、時には足を河の流れにとられそうになりながらも、舁ぎきりました。両岸の多くの人々からの歓声。このように住吉大社では、ツミ・ケガレを取り除く夏越祓とともに、神輿を舁ぐことで生命の活性化をはかってきた伝統を今も地域の人々とともに継承しているのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

白衣に緋袴──巫女姿で一日修行
   行儀や拝礼作法に挑戦
 若い女性対象に「巫女さん入門」講座
        東京の神田明神く


 「日本の伝統と文化に触れ、神社への造詣を深めつつ、日本女性としての豊かな情操を養ってほしい」
 東京の神田明神$_田神社で8月17日、「巫女さん入門〜初級研修」が開かれ、20歳前後の女性約30人が巫女さん姿で行儀作法などの修行に挑戦した。体験取材としてマスコミ関係の女性も受講。本学会事務局の林原礼奈も終日、研修に加わった(下の「体験記」参照)。
   ◇ ◇ ◇
 白衣に緋袴の衣装に着替えた受講者は開講式・正式参拝に臨み、続いて神道の様々な側面や日本文化に込められた心、巫女さんのこと、神田明神のこと――などについて、講師の清水祥彦禰宜、岸川雅範権禰宜から講義を受けた。巫女さんのあり方と心構えについて講師は「言ってみれば日本文化の継承者。コスチューム云々でなく、どれだけ清らかな心で神様に奉仕できるかが大切です」と話した。
 昼食も修行の一つ。食前食後の和歌を奏上し、神の恵みに感謝を捧げながら弁当を口に運んだ。
 午後は実習が中心。鳥居繁権禰宜らを講師に「大祓詞」奏上、正座と膝進、拝礼・玉串の作法などに挑んだ。途中、講師陣から「だんだん背筋が曲がり始めている人がいます」「お腹に力が入っていないと背筋は伸びませんよ」と激励が飛び、プチ修行≠ニはいえ慣れない正座に冷や汗の受講生も。だが、講師の「いま流行の浴衣を着たとき、行儀作法のできた一寸した動きで品が良く見える」「一度でいいから、手水など正式作法で参拝してみてください。傍から見ても、自分でも、気持ちがやっぱり違います」との話に納得の様子だった。
 この後、模擬結婚式や巫女舞、雅楽の演奏にも触れ、一人一人の名前を入れた幸福祈願の祝詞を厳かに奏上してもらい感激の面持ち。閉講式(正式参拝)では大鳥居信史宮司からねぎらいの挨拶をもらい、修了証を受けて記念撮影する頃には疲れを忘れた晴れやかな表情を見せていた。

ミコさんコスプレ≠ノショック
「本当の姿、美しい文化を多くの人に知ってほしい」

 同神社は神田・日本橋・大手町・丸の内といった日本を代表する大オフィス街を氏子地域にもつ。そのなかに含まれる、コスプレ・ブームに沸くアキバ≠アと秋葉原に近年、「ミコさんコスプレ」が登場したことにショックを受け、「本当の巫女さんの姿と心を知ってもらわねば」と研修を企図したという。
 一回目の昨夏は氏子の子女中心の「実験的な試み」だったが、今回は一般に広く募集した。伝統文化への関心は高く、定員を遥かに上回る応募があり、やむなく抽選としたほど。〈高校生から22歳の未婚女性〉という年齢制限を承知で、「日本の文化を知らない自分が恥ずかしい。参加させてほしい」と電話してきた60歳の婦人もいたという。受講生からも「とても良かった。自分の中の大切なものを思い出した感じ」との感想が聞かれた。
 こうした反響に、岸川権禰宜は「人数や時間の制限など課題も残るが、ぜひ続けたい。『巫女さん』だけでなく、世代を超えた見学会や講習など色々な企画を練ってみたい」と話す。
全体を統括した清水禰宜も、熱烈な声がある以上、広い層の方に参加してもらえるものにしたいと意欲を示し、「宗教の押し付けではない。日本人が当たり前にやってきた美しい文化があるんだということを現代の多くの人に知ってもらいたいのです」と付け加えた。

***体験記***
 朝8時過ぎ、神田神社に集まる若い女性たち。テレビ取材やマスコミも多数おり、みんなそれぞれ緊張しつつ、とりあえずカッコだけ巫女さんに。2人のほんものの巫女さんが30名に着付けをしようとがんばったが、とても手が足りない。右前に着ている人もいたりとハプニング続出、それでも白衣と赤い袴をつけると、なぜか皆それなりに見えるところがすごい。私はどうにか見よう見まねで着られて大満足、不思議と着物を着ると背筋が伸びる。
 午前中は、ご神殿でのご挨拶のあと「神道レクチャー」。日本人女性であるための心の持ち方などの講義があったが、「言挙げせじ」自己主張しないという言葉が印象深かった。あくまでも慎ましやかにおしとやかに…。
 とても驚いたのが食事。全員で和歌を歌ってから食べ始め、食事中は終始無言。食べ終わった後も、和歌を歌い静かに片付ける。こんなによく噛んでよく味わったのは初めてかもしれない。キリスト教でも食前には祈るし、崇拝する神は違っていても、根本的な「感謝する」という気持ちは誰でも変わらないものだし、失ってはいけないものだと感じた。
 午後は、メインであるお作法の実習。なんと正座したまま大祓の祝詞を六回も奏上!時間にすると約20分間、背筋を伸ばし、祝詞を目高に持ち、権禰宜さんにあわせて奏上する。喉は渇くし、足はしびれるし、腕は棒のようになるし、慣れるまでは絶対に苦痛な作業。それでも綺麗なお辞儀の仕方、座り方、立ち方、上体を正したままの進み方、どれも日常生活においても通用するものばかりだった。
 最後に清水禰宜さんがおっしゃった「今日の経験を生かし、(外見だけではなく心が)美しいと思われるような女性になってほしい」。女性であることがとても誇りに思えた巫女さん一日体験だった。
Copyright(C) 2005 ISF all rights reserved
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。