神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 神 宮 徴 古 館

伊勢の神宮の精神と文化に触れる
「遷宮」徹下の御装束神宝に見る日本の美と精神と技

  「歴史と文化の総合博物館」と銘打つ、日本で初めての私立博物館。同じ緑苑内にある「農業館」「神宮美術館」とともに、通常の参拝だけでは伺い知ることのできない神宮の精神文化、神々に捧げられた美術に触れることができる。
  神苑の清浄と美観を守ることなどを目的とした財団法人「神苑会」により明治20年に企画され、同42年、ルネッサンス式の館とベルサイユ宮殿を模した前庭という施設が完成した。建物の設計は明治を代表する建築家、片山東熊。「神苑会」の解散とともに神宮に移管され、以来、「お伊勢さんの博物館」として親しまれてきた。
  昭和20年、終戦間際の戦火で建物と収蔵品の大半を焼失したが、8年後、第59回の「神宮式年遷宮」を記念して復旧された。外壁をそのままに、当初の平屋を2階建に改装。昭和60年には新館も完成した。建物自体が国の登録有形文化財(平成10年指定)だ。
  収蔵・展示品は御装束神宝をはじめ国指定重要文化財11点を含む歴史・考古・美術工芸品など約1万3千点。歴代天皇がおまつりしてきた由緒から皇室との関わりを伝える歴史的な資料も多い。
  本館展示ではまず、「天孫降臨」、天照大御神を祀るため各地を巡幸した倭姫命の軌跡、御鎮座についてパネル写真と文献資料で解説。続いて神嘗祭はじめ神宮の様々な祭、毎朝夕の「大御饌」、祭事の装束や祭器具などについて展示する。
  徴古館を代表し象徴するのは何といっても「御装束神宝」であろう。「式年遷宮」で古式のまま新調されたのちに徹下された品々で、「御装束」は衣装や櫛などの服飾品や、遷御の儀に用いる品々など。「神宝」は紡績具、楽器、太刀、香爐などの調度品や日常品など。以上は付属品も加えると約800種・1600点に及ぶという。「式年遷宮」でこれら品々の調製に奉仕するのは当代最高の美術工芸家であり、20年ごと営々と続く「遷宮」により、古来の美と精神が守り伝えられていることになる。同時に日本の匠と技術も継承される。
  ほかにも、皇大神宮(内宮)の模型や、神宮の歴史および縁の人物に関する史料、江戸時代に流行した「おかげ参り」など伊勢参宮に関わる歴史や風習に関わる資料、伊勢の神楽の装束・面・楽器、「第59回式年遷宮(昭和28年)で奉賛奉納された高名な芸術家らの作品群も展示される。


▼ 伊勢市神田久志本町1754-1
▼ 電話:0596-22-1700
▼ 開館は9時から16時半(入館は16時まで)
▼ 休館日は月曜日(祝日の場合はその翌日)、年末3日間、臨時休館日
▼ 観覧料は農業館を含め大人300円、高校・大学生150円、小学・中学生100円(美術館も含めた割引の三館共通観覧券あり)


Copyright(C) 2005 ISF all rights reserved
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。