神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
日々雑感 :梅田善美理事長

神宮ご遷宮用材の奉曵

  木曾で斧入れされた神宮の式年遷宮新社殿の重要なご用材を運び込む「お木曳き初式」に、私も伊勢市の一日神領民として、さる4月13日に参加した。この日、神道国際学会が呼びかけて集まった一日神領民は約50名。それぞれ、小川町勢勇団のハッピを身につけ、鉢巻もきりりと締めて、同町の四百人を越える「陸曳き」一番車の仲間入り。木ぞりに乗せられた外宮のご用材は、170メートルに及ぶ長い白布にまかれた引き綱で「エンヤッ、前へ、エンヤッ、行こ、行こ」と大声ではやしながら、ゆっくり進む。
  実は、私にとっては、ご遷宮のお木曳きに出会うのは二度目である。昭和28年、戦後初めてのご遷宮が数年遅れで行われたときに、伊勢にいたのだ。しかし、その頃はまだ、旧神領民だけしか参加できなかったので、沿道で眺めているばかりであった。
  その後、一日神領民の制度がもうけられたことで、大勢の人々が盛儀に参加できるようになった。私も約50年の月日を越えて、はじめて、お木曳きの綱を引くことになったのだ。
  前日の二見興玉神社での浜参宮から緊張が始まった。13日早朝には、宮川堤防での一番車の奉曵団長しか歌えないという「木遣り歌」を聴き、身がいっそう引き締まった。
  その堤防で「どんでん」と呼ばれる勇壮な木ぞりの駆け上がり、駆け下りが終わると、いよいよ曳き車に大きなご用材が乗せられ、飾りつけが行われ、400人の手が綱にとりかかった。
  距離にすれば、わずか2キロメートルということだが、お木曳き車は「ぶおーん」という「わん鳴り」の音を響かせながら、伊勢の街中をゆっくりと進み、時には、引き手たちが道の真ん中で綱を向かい合わせてぶっつけあい、綱を練るという威勢のよい動作を繰り返しながら、外宮にむかう。綱につながる老若男女を問わず、賑々しく、大きな祭りに参加している喜びに満ち溢れていた。
  やがて、外宮の神域に入ると、奉曵の雰囲気は神々しさに変った。神宮大宮司以下、50人余の神官に迎えられたご用材は、定めどおり大庭に安置された。こうして、神道国際学会の会員と一緒に、人と神とが祭りあう行事を通して、日本人の心のふるさとを実感した一日だった。
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