神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道国際学会だより

「私は触媒」と梅田理事長が挨拶 杭州のシンポで
 昨年十一月に浙江大学日本文化研究所などが主催して杭州市の浙江工商大学で開いた国際シンポジウム「道教と日本文化」には、本学会からも物心両面にわたり最大限の協力と支援をおくった。これを受けて、シンポ閉幕式で挨拶を求められた梅田善美理事長は「私は自身を化学用語でいうカタリスト(触媒)だと思っている。そのものには何の役割もないが、他のものとくっつくことで、物事がどんどん広がっていく――それが触媒の役目。主催者の王勇所長など優秀な方々とつながりを持つことでそれぞれ特色ある広がりを見せている」と語り、このシンポが中国と日本の文化的影響を探るシリーズの形で二回、三回と続いていくことに期待を表した。

新所長にモロジャコーワ氏
 神道国際学会モスクワ代表部の新所長に一日、エリゲーナ・モロジャコーワ女史が就任した。ウラジミール・イェリョーミン所長が昨年7月に逝去したのにともなう選任人事。モロジャコーワ氏はロシア科学アカデミー東洋学研究所の日本研究センター所長。専門は日本史・社会論・神道で、日本語と英語も堪能。近刊にロシア語「まつり」がある。

モスクワで神道文化研究のセミナーを開催
 神道国際学会モスクワ代表部は2001年に発足して以来、年に数回、日本文化と神道文化を主題としたワークショップ(勉強会)を代表部事務所のあるモスクワ国立大学アジアアフリカ諸国大学の教室で開催しているが、2004年十二月十四日には、故イェリョーミン所長の追悼会を兼ねて、ロシア国立レーニン図書館付属東洋文庫を会場に、セミナー形式の研究発表と神道ワークショップを開催した。
まず、次期代表部所長に就任するエリゲーナ・モロジャコーワ教授の追悼の言葉に続いて、イェリョーミン博士の冥福を祈った。
今回の研究発表者は三人で、アレキサンドル・メシャリャコフ・ロシア国立人文大学の教授による、「明治天皇と日本民族(Japanese Nation)の成立」。ヨーロッパ文明と出会って日本民族はどう変化したかという内容で、日本文化における他文化の受容性がかたられ、活発な質問や異論・反論も提示された。
二番目にはセルヒー・カプラノフ・ウクライナ科学アカデミー付属東洋学研究所研究員の「日本文学における住吉大社とその神々」。日本に滞在中に調査した資料から、住吉の神々が八世紀から十五世紀にわたる文学作品の中にどのように描かれ、また変化しているかについて発表。三人目はスベトラーナ・ビシャリヴァ・ノボシビルスク国立教育大学教授による「飾りの美学」で、日本の神社に見られるさまざまな装飾品を美学の見地から分析して発表した。出席者は、神道国際学会会員を含め、大学教授や大学院生、大学生など十五人。質疑応答も活発になされ、好評だった。
モスクワ代表部のラダ主任によれば最近、代表部事務所を訪れて、神道大系を読みふける学者や研究者の姿がめっきり増えたという。東京の本部にも、神道文献の寄贈依頼があいついでいる。


第2回神道コロキアム
外国プレスなどを対象に東洋的思考を解説 國弘正雄教授

 本会は昨年十月二十八日に東京の日本外国特派員協会で日本在住の大使館やプレス関係者ら外国人を対象に「神道コロキアム」を開いた。
 日本文化の背景にある価値観を理解してもらうための英語による講演会。二回目となる今回は國弘正雄理事(英エジンバラ大学特任客員教授・元参議院議員)が「相互排他的で二者択一的な価値観」と「相互浸透的で両立を可能とする価値観」との対比から東洋的思想の特質を紹介し、依然として混迷の続く世界情勢に対する鎮静剤として有効な論理思考であることを示した。
 國弘氏は宗教観と宗教対立に関して、一神教と多神教と単一神教に分け、神々の中に最高神を布置する単一神教(ヘノセイズム)は紛争に対する緩衝的思想として意義があるとした。また、西洋哲学の中で主要な論理背景の一つとなっている二者択一の思考に対し、多くの仏教宗派に定着するなど東洋に伝統的な四句分別(テトラレンマ)の思考について細かく解説し、今後の世界の和平に資する論理であることを主張した。
 なお、講演後は大崎直忠常任理事(メディアコンサルタント・アイエスアイ社主)をモデレーターに質疑応答を行なった。


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