神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
国際シンポジウム 「道教と日本文化」 中国・杭州

神道国際学会が代表団を派遣

 中国の浙江大学日本文化研究所などが主催する国際シンポジウム「道教と日本文化」が昨年十一月五、六両日、中国・杭州市の浙江工商大学(共催)で開かれた。国内外から七十数人が代表参加し、日本文化に影響を与えた道教的要素について学際的、国際的な視点から討議を繰り広げた。主催大学と交流の深い四天王寺国際仏教大学と神奈川大学人文学研究所が協力した。
 神道国際学会は今シンポで発表を行なった多くの中国人学者らと従来から交流を重ねていることもあり、協賛者として、企画段階から物心両面で支持を表明。とくにシンポ参加の代表団を組織、派遣するなど後援に力を尽くした。
 学術発表を行なったのは中国内の各大学をはじめ日本、韓国、フランス、ベルギーなど各国大学の学者ら約四十人。神道国際学会の役員に名を連ねる各学者も加わった。初日には基調講演と分科会(「宗教と民俗」「典籍と漢字」「思想と文化」)が、二日目には分科会総括とパネルディスカッションが開かれた。

日本の道教研究の難しさを指摘 早大・新川教授

 基調講演では早稲田大学の新川登亀男教授(古代史)が「古代日本と道教」、浙江大学の王勇教授(同大学日本文化研究所長)が「鑑真渡日と泰山府君」、日本芸術院の東儀俊美氏が「宮中祭祀と雅楽」と題してそれぞれ話し、道教的要素の日本への影響について学際的な論点からアプローチを行なった。
 うち新川教授はシンポ全体に関わる視座を提示するかたちで近代以降の日本における道教研究の歴史を振り返った。「底の浅い研究」から学際的な学者らによる研究の進展、そして『選集・道教と日本』(一九九六〜九七)の刊行という成果にいたる大局的な流れを紹介し、同時に日本の道教研究がはらむ矛盾や困難さも指摘した。
さらに同教授は、日本の古代国家確立期には朝廷が道士の教えとしての「道士教」の評価・位置づけを大きな課題としたところからみても道教を軽視できない姿勢があったものの、「その後の歴史では常に『道士教』に接しながらも、それをなんとか直接に口の中に飲み込まず、保留するという歴史を長く積み上げながら文化を整えていった」と述べ、逆説的なねじれた作用を及ぼした道教の日本への影響を研究する悩ましさを打ち明けた。

神道関係からの発表者

 神道国際学会関係者の研究発表は次のとおりである。真弓常忠・住吉大社宮司(皇學館大学名誉教授)が「神道祭祀における道教的要素」、薗田稔・秩父神社宮司(京都大学名誉教授)が「妙見信仰と道教」、三宅善信・金光教泉尾教会執行が「金神の再発見―道教信仰の近代日本における展開」、米山俊直・国際京都学協会理事長(京都大学名誉教授)が「えびす信仰と道教」(梅田善美氏代読)。


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