国際ワークショップ「神道をめぐるシンボリズム」平成18年10月9-10日 円卓討論会「神道研究のグローバル化に向かって」平成13年11月11日 座談会「環太平洋地域における神道研究に関する情報交換」 平成10年6月7日

国際シンポジウム「災害と郷土芸能」が2月25、26日の二日間、岩手県大船渡市盛町の大船渡リアスホールで開催された。神道国際学会、および地元のケセン地方(住田町・陸前高田市・大船渡市)の市民大学「ケセンきらめき大学」が共催した。東日本大震災の津波で犠牲となった方々の鎮魂をあらためて祈念するとともに、地域復興を目指すにあたっての基本理念や、伝統芸能を含めた地域民の結束の重要性などを話し合い、提言を行なった。 神道国際学会は東日本大震災から間もなく一年となる2月25、26両日、国際シンポジウム「災害と郷土芸能」を岩手県大船渡市のリアスホールで開催した。ケセン地方(大船渡市・陸前高田市・住田町)の市民団体「ケセンきらめき大学」との共催事業で、大船渡市が後援した。 同震災の津波で大きな被害を受けたケセン地方。当シンポでは、同地域に継承される伝統芸能の奉演により犠牲者の鎮魂を改めて願い、併せて地域復興における基本理念、芸能を含めた地域民の結束の大切さを語り合った。 第一部・初日 「ケセン鎮魂のための地域伝統芸能大会」    鎮魂にむけケセンの郷土芸能を奉演 初日(第一部・25日)は、ケセンきらめき大学が主体となった「ケセン鎮魂のための地域伝統芸能大会」。雪の舞うあいにくの天候だったが、地元の人々を含め多数が来場した。 開会にあたり、特別来賓の明石康氏(元国連事務次長)、来賓の戸田公明氏(大船渡市長)、主催者側の鈴木迪雄氏(ケセンきらめき大学アドバイザー)がそれぞれ挨拶した。 うち明石氏は、震災後に示した日本人の抑制的な態度について、「一人一人の立派な態度、絆、連帯感は世界に多くの感動をもたらした」と述べ、海外メディアが「静かなる威厳」との表現で日本を賞賛したと紹介した。その上で、今シンポは「なぐさめ、鎮めと同時に、山河のありがたさ、人間と自然の関係性などを考える絶好の機会となる」と期待感を表明し、さらに「再建に向け、地元市民は粉骨砕身、着々と前進している」と被災地の人々に敬意を送った。 戸田氏は地元を代表して、全国からの参加者に歓迎の意を表すとともに、当地の伝統芸能に関しては、踊り手や指導者、装束や練習場所を津波で失ったものの、「絆によって芸能を伝承していくことは不可欠。多くの協力を得て郷土芸能は今も継続している」と報告した。そして、「シンポジウムを通じて、私たちの取り組みを世界に発信していただくことは復旧・復興に弾みがつく。私たちも夢と希望のある新しい町づくりに向け、一致団結して歩み始める」と、新たな決意を示した。 鈴木氏は、「多くの命と人々の生活を震災が襲い、大きな悲しみがもたらされたが、地元では一歩一歩、前へ歩んでいると聞いている。その中で、地元の人たちが誇りとしている芸能が犠牲者の鎮魂となればと考えている」と語り、今シンポの意図と意義を強調した。 芸能奉演を前に、小島美子氏(国立歴史民俗博物館名誉教授)が演目の解説を行なった。同氏は、民俗芸能の盛んな当地域における「剣舞」や「鹿踊り」などに込められた、非業の死や犠牲への慰めという主旨を踏まえて、「現代では、芸能の本質が失われつつあるが、本日は、その本質にふさわしく演じられる。また『百姓踊り』のように、庶民の工夫で新しい芸能ができていくのも一つの大きな力だ」と感慨を込めて話した。 郷土芸能を奉演したのは七団体。勇壮に、あるいは野趣豊かに披露される一つ一つの舞いや所作に客席からは盛んな拍手が送られた。町の復興に着手したところということもあり、来場者からは「郷土の素晴らしさを感じた。思わず涙が出そうになった」との声も聞かれた。 奉演された演目と奉納団体は次の通り。 「生出神楽~橋弁慶~」生出神楽連(陸前高田市)▽「門中組虎舞」門中組振興会(大船渡市)▽「赤澤鎧剣舞~太刀踊り~」赤澤芸能保存会(同)▽「行山流外舘鹿踊り」外舘鹿踊保存会(住田町)▽「浦浜念仏剣舞~念仏踊り~」浦浜念仏剣舞保存会(大船渡市)▽「金成百姓踊り」金成百姓踊り保存会(陸前高田市)▽「小通鹿踊り」小通芸能保存会(大船渡市) 第二部・二日目 国際シンポジウム「災害と郷土芸能」 鎮魂・供養と民俗芸能、そしてコミュニティの結束―― 講演とパネルディスカッションを展開    二日目(第二部・26日)は神道国際学会によるシンポジウム「災害と郷土芸能」が開かれ、三宅善信氏(神道国際学会常任理事)を総合司会に、講演とパネルディスカッションが行なわれた。 冒頭、初日に引き続き挨拶した明石氏は、前日の芸能奉演について、「当地域は再生を目指して、しっかりと足並みを揃えていると感じた」と感想を披瀝。そのうえで、シンポジウムについては、「二十一世紀、ますますグローバル化する中で、自己アイデンティティを自覚し主張することは大事。しかし他者への理解、尊重も進行させねばならない。我々の行動として課題を乗り越えるきっかけとなれば」と期待を込めた。 主催者として挨拶した薗田稔氏(神道国際学会会長)は、「ここ三陸地方の津波による多くの命の犠牲を無駄にしてはならない。地域社会の再生を真剣に考えることが鎮魂になる」と強調。さらには、地域復興への枠組みに関して、「昨日の民俗芸能にも感じたが、我々は生きた人だけでなく、先祖、目に見えないもの、そして自然も参与してコミュニティを作ってきた」と述べて、今シンポがコミュニティ再生への一助となるよう来場者の参画を呼びかけた。 同じく主催の田村満氏(ケセンきらめき大学学長)も挨拶し、郷土芸能の伝承について、「震災後、大変なハードルがあるが、乗り越え、伝えていかねばならない。その思いに真剣さ、本気さがあれば足腰は強くなる。そうすれば今後も伝えていける」と力説した。 続いて講演があり、平山徹氏(大船渡市郷土芸能協会副会長)が「わが故郷の郷土芸能・復興への絆」、ロナルド・モース氏(元カリフォルニア大学教授)が「地球的視野における自然災害」、赤坂憲男氏(学習院大学教授)が「災害と宗教・文化」と題してそれぞれ話した。 平山氏はまず、岩手県内に伝わる芸能の種類や数について解説し、うちケセン地域は「郷土芸能の宝庫だ」と述べて、特に大船渡市の芸能に関して、部門ごとの特徴を紹介した。同氏は、県内でも近世、伊達藩と南部藩のいずれに属したかで特色があるとし、ケセンの鹿踊りが行山流として伊達藩の流れを色濃く残しているとした。さらに、当地芸能の震災による被災状況については、津波で装束から備品まですべて流された芸能保持団体が続出したとし、「涙も言葉も失った。『伝統を継承するのも中断か』と不安がよぎった。しかし全国から復興への支援、援助をいただき、感謝の念とともに復活に尽くしている」と伝承への決意を語った。 モース氏は、世界の災害と同様、東日本大震災においても、災害に対する備えが役に立たなかったこと、災害に対する政治的・経済的な対応が低かったこと、災害とコミュニティの関係に対する社会の理解が希薄だったこと──など、今後への課題が浮き彫りになったとし、「人間には順応していくための能力がある。生活を復興するために意欲しなければならない」とまとめた。 赤坂氏は冒頭、津波の被災地を歩いた体験から、「そこには宗教、あるいは宗教まがいのものが、あちこちに露出していた」と切り出し、新興宅地や水田開拓地から背後へと奥まった丘にある、古い由緒を持つ神社が津波から生き残ったとして、「被災地を歩く旅が、気がついてみると、残った神社をお参りする巡礼のような旅になっていた」と語った。そして、訪問地のいくつかを事例として挙げながら、その精神的な光景を紹介した。とくに、供養と鎮魂の情景を取り上げ、あらゆるものにこもる命をあの世に送り返す心持ちの露出した東北の精神を強調。その目撃の経験によって、民俗学者として「民俗学が試されたり、変更を余儀なくされたりした」と吐露し、最後に、生けるものと死者、人間と自然との付き合いや関係へ思索することの重要性を指摘した。 三氏の講演後、茂木栄氏(國學院大学教授)を司会にパネルディスカッションがあり、講演の三氏に薗田、小島の両氏、ムケンゲシャイ・マタタ氏(オリエンス宗教研究所所長)が加わり、鎮魂・供養と祭り・民俗芸能の深いつながり、そこから発展するコミュニティとの関係について議論が続いた。 閉会にあたり挨拶したマイケル・パイ氏(神道国際学会理事)は、自然災害において人災の側面も考慮すべきだと付け加え、総合司会の三宅氏も、日本文化と自然災害の切り離せない関係を強調した。 オプショナルツアーの報告について: 伝統芸能復興・保存応援ツアー オプショナルツアー「被災地の社寺を訪ねる」国際シンポの翌日に催行  神道国際学会は、岩手県大船渡市での国際シンポジウム「災害と郷土芸能」を終えた翌日の2月27日、オプショナル・バスツアー「被災地の社寺を訪ねる」を実施した。ケセンきらめき大学観光学部長で観光ガイドの新沼岳志さんが案内を担当した。  早朝、宿泊の大船渡プラザホテルを出発した一行は、市内を一望する加茂神社を正式参拝。荒谷貴志宮司の父君である禰宜様から、大津波が襲来した際の様子、その後にとった行動などについて話を聞いた。  続いて世界の椿展がオープンしたばかりの碁石椿館(大船渡市)を見学し、陸前高田市へ入った。    まずは南三陸の名刹として名高い禅寺、普門寺(曹洞宗)を参詣。次に、津波に押し流された同市の中心地を訪れた。廃墟となった市役所の前には祭壇がおかれ、周りには赤いランドセルが積まれていた。参加者はその前に整列して黙祷。それぞれになくなられた方々の冥福を祈った。    ついで、高田松原で唯一残った「奇跡の一本松」を遠望しながら、ガイドの新沼さんが語る当時の惨状に聞き入った。    最後に〝気仙成田山〟金剛寺(真言宗智山派)を参拝した。高台にある同寺には一時避難した人も多かったという。    さらに同寺の近くに鎮座していた今泉天満宮を拝した。流された社殿には結界が張られ、樹齢八百年といわれるご神木の「天神の大杉」のみが当時のままに立っていた。  ガイドを務めてくれた 陸前高田市の新沼岳志さん …

第16回国際シンポジウム「災害と伝統芸能」 Read more »

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