第15回神道セミナー「外国人学者の眼に映ったカミ・ホトケ」

15thsemi本会主催の一般公開講座、第15回神道セミナーが2月27日午後、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮直会殿で開かれた。今年のテーマは「外国人学者の眼に映ったカミ・ホトケ」で、約150人が参加した。後援は鶴岡八幡宮、協賛は槐の会。
講題と講師は「自然、人間と神々の世界」ランジャナ・ムコパディヤーヤ氏(インド・デリー大学東アジア研究科准教授)、「神道論における開放性と主体性」劉長輝氏(台湾・淡江大学准教授)、「仏教と在地信仰――神道の比較研究の可能性を探って」ファビオ・ランベッリ氏(米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)、「本地垂迹の伝統にみる神と仏の多層性」ウィリアム・ボディフォード氏(米カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)。コメンテーターは国際日本文化研究センター教授で東京大学名誉教授の末木文美士氏、司会は同センター准教授で本会副会長のジョン・ブリーン氏。
開会にあたり司会のブリーン氏は「由緒ある当八幡宮さんで開く本セミナーを実りあるものに」、本会会長の薗田稔氏は「桜も咲き始めた素晴らしい境内で催させていただくこと、よし田田宮司様に篤く御礼申し上げる」とそれぞれ挨拶した。また、会場となった鶴岡八幡宮の宮司、よし田茂穂氏は「日本人の信仰の内にあるカミ・ホトケについて、外国の先生方から紹介いただく。どのように解いてくださるのか、我々も楽しみにしている」と歓迎の辞を述べた。

自然と神々と人間が密接につながる神道
ムコパディヤーヤ氏
外来のものと融合してこそ自国文化が発展がする
劉氏

   ムコパディヤーヤ氏は、自然宗教として解釈される神道やヒンズー教における神観念について、神々たる自然現象を神格化して捉えるヒンズー教、国生みや神生みで生まれる自然や神々と人間との緊密なつながりを示す神道──などと説明し、さらには宇宙を生命体とみる新宗教の生命主義、日本人の宗教心、宗教の社会貢献へと話を進めた。
劉氏は、日本文化ひいては神道に関して、外来文化と融合することで自国文化を育て発展させることが可能になったという開放性と主体性の両面があると論じた。そして、仏、儒、道などを受容した様相とともに、仏家神道における仏本神迹、社家神道・吉田神道に見る神本仏迹などの思考様式を開放性と主体性から考察し、山鹿素行の神道論における儒教の捉え方、自国尊重の意識にも言及した。

神道は仏教と在地信仰の関係のあり方の中で展開
ランベッリ氏
社会における神仏の機能
ボディフォード氏

   ランベッリ氏は、黒田俊雄の顕密論に触発された日本国内外の学者による中世神道研究の展開に近年、行き詰まりが見えるのは、中世神道説の背景に多様性と多層性、開放性があるのは明らかであるにも関わらず、一般的には保守的、還元主義的な神道理解が多くを占めるところにあるとした。そのうえで、神道は仏教と在地信仰との多様な関係のあり方の中で展開してきたという視点からの研究が重要だと指摘した。
ボディフォード氏は、日本の神と仏を理解するアプローチとして、社会における神・仏の機能という観点を提起し、神は土地の繁栄と豊作、そこの氏族を守ったとした。一方、仏は時空を越えた普遍的な教えを説いたとし、その抽象哲学的な教えに人々が近づき、教説が日常的に機能していくために、神々も役割を果たしたとした。また、仏教教義に通じる「入り口」を開いた具体的様相として、鶴岡八幡宮などの流鏑馬や放生会の儀式を挙げ、神仏を合わせたローカルとユニバーサルの組み合わせに日本的特徴があるとまとめた。

コメンテーターの末木氏は、日本の宗教における神と仏の関係、習合について触れ、独立した神道と仏教が対等に結びついたという状態ではないものの、体系を有した仏教が在地の神を吸収してしまったというわけでもないという一種のバランスがあるとしたうえで、各講師の神・仏に関する講義にコメントと質疑を与えた。
セミナーではこのほか、会場からも多くの質問が寄せられ、終了に際して挨拶した薗田会長は、新たな視点や発想による外国人学者の講義に、参加者ともども実りあるセミナーになったと謝意を表した。

出講者の簡単なご紹介(敬称略)

「自然、人間と神々の世界」ランジャナ・ムコパディヤーヤ
(インド・デリー大学東アジア研究科准教授)
「仏教と在地信仰――神道の比較研究の可能性を探って」
ファビオ・ランベッリ(米国・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)
「本地垂迹の伝統にみる神と仏の多層性」ウィリアム・ボディフォード
(米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)
コメンテーター=末木文美士
(国際日本文化研究センター教授、東京大学名誉教授)
司会=ジョン・ブリーン
(国際日本文化研究センター准教授、神道国際学会理事)

スカパー放映予定

このセミナーの模様がスカパーにて放映決定。
216チャンネル「精神文化の時間」
4月24日(日)21:30~22:30
4月28日(木)21:30~22:30

放映された映像は、DVDとして講演録とともに神道国際学会の会員には後日、無料配布される。