日中の政治・文化における通交開始の象徴、聖徳太子による遣隋使派遣(六〇七)から今年はちょうど1400年。この節目にあたっての日中交流1400年記念シンポジウム「住吉津より波濤を越えて―遣隋使・遣唐使がもたらしたもの―」が5月8、9両日、大阪の住吉大社で開かれた。両国の学者らによる基調講演や記念スピーチ、パネルディスカッションのほか、多彩なテーマに沿った研究発表があり、また有史以来、両国を往来した先師先徳をしのぶ慰霊祭も営まれた。主催は企画に賛同した両国の有識者らで組織する同シンポ実行委員会。共催は住吉大社、日中科学技術協力会議、浙江工商大学(中国・杭州市)、四天王寺国際仏教大学、四天王寺、および神道国際学会。後援は外務省、文部科学省、中華人民共和国駐大阪総領事館、大阪府、大阪市ほか。
開会式(司会は今宮戎神社宮司の津江明宏氏)では実行委員会会長を務めた日中科学技術協力会議代表理事で前・行政・規制改革担当大臣(衆議院議員)の中馬弘毅氏が挨拶。浙江工商大学学長の胡祖光氏と、四天王寺国際仏教大学学長の奥田清明氏が祝辞を述べた。また今シンポを最初に立案した住吉大社宮司で皇學館大学名誉教授の真弓常忠氏(シンポ実行委員会副委員長)がシンポの趣旨説明を行なった。また、祝電として出雲大社宮司の千家尊祐氏、秩父神社宮司で京都大学名誉教授の薗田稔氏(神道国際学会会長)、國學院大学理事長の宇梶輝良氏、同学長の安蘇谷正彦氏からのメッセージが紹介された。
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初日は基調講演として浙江工商大学日本文化研究所所長の王勇氏(シンポ実行委員会委員長、神道国際学会理事)が「日本に骨を埋めた鑑真」、奈良大学教授の東野治之氏が「唐に渡った人々」、京都教育大学教授の和田萃氏が「遣隋使と大化の改新」と題してそれぞれ話した。また記念スピーチを中華人民共和国駐大阪総領事館総領事の羅田廣氏(副総領事が代読)、中国社会科学院日本研究所所長の蒋立峰氏が行なった。途中、二胡奏者・朱啓高氏による演奏アトラクションをはさんで、講演を受けてのパネルディスカッションが開かれた。コーディネーターは金光教春日丘教会長で神道国際学会常任理事の三宅善信氏(シンポ実行委員会事務局長)。パネラーとして上記3名の講演者および真弓宮司に、神戸商船大学名誉教授の松木哲、日本海事史学会理事の上田雄の両氏が加わった。夕方からは同大社・吉祥殿で晩餐会も催され、観世流の片山清司、分林道治氏らによる半能「石橋」などが会を彩った。
東大寺長老を導師に慰霊祭も
往来の遣使ら二百五十名の名前を神前に読誦
二日目は朝から遣隋使・遣唐使慰霊祭が東大寺長老の森本公誠氏を導師に執り行なわれ、それぞれの志を胸に両国を往来した遣使や学僧ら250人余の名が神前に読み上げられた。このあと、二つの分科会(座長は神道国際学会理事長でシンポ実行委員会副委員長の梅田善美氏と、浙江工商大学日本文化研究所副所長の王寶平氏)に分かれて研究発表が行なわれた。
発表者と内容は次の通り。
▽泉敬史・札幌大学教授「古代日本の留学者たちの日中交流」
▽畑中智子・京都女子大学短期大学部非常勤講師「慈覚大師円仁伝の研究」
▽李美子・浙江工商大学日本文化研究所講師「遣唐使時代における日本と新羅・渤海」
▽上田雄・日本海事史学会理事「遣唐使の船と航海」
▽松木哲・神戸商船大学名誉教授「遣唐使船」
▽南谷美保・四天王寺国際仏教大学教授「古代における雅楽の受容―唐よりもたらされたもの―」
▽吉田扶希子・西南学院大学講師「『懐風藻』における唐風漢詩の影響」
▽水口幹記・浙江工商大学日本文化研究所助教授「『天地瑞祥志』に載る呪符」
▽高井道弘・住吉大社権宮司「遣唐使と書芸の進化」
▽清水潔・皇學館大学教授「報恩経典の伝来とその日本的展開」
研究発表に引き続いて午後からは、同大社・住吉大神の御鎮座伝承に基づく卯之葉神事に参列し、同神事に続く恒例の舞楽(天王寺楽所雅亮会)を鑑賞した。その後、研究発表を含めた二日間の総括として全体討議(記念フォーラム)が開かれ、王勇氏をコーディネーターに座長である王寶平、梅田善美の両氏が各分科会をまとめるとともに、パネラー(発表者の一部)が発言を行なった。
友好に向け一層の尽力を
― 挨拶で各氏が表明
それぞれの挨拶で各氏は今後の日中交流の重要性、友好への努力に向けた決意を表明した。
中馬弘毅氏は「互いを知るということ、開かれたかたちでやっていくことが何よりも大事だ。今シンポに関わったものが中心となって、秋には中国・西安で日中文化交流祭を開催する。今後も互いに学ぶ精神でやっていきたいと思う」(晩餐会の挨拶で)
胡祖光氏は「悠久の中日交流の歴史を振り返ることで、未来に向けた確固たる友好関係を築きあげることを祈念している」(開会式の祝辞で)
奥田清明氏は「今シンポのような研究会がさらにテーマを広げ、今後も続いていくことを祈っている」(開会式の祝辞で)
真弓常忠氏は「両国間には幾多の問題が横たわるものの、急速に発展する中国経済の進展に伴い、貿易はにわかに活況を呈している。しかし利害得失のみでなく、相互の文化に学ぶところがなくてはならないと思っている」(シンポの趣旨説明で)
蒋立峰氏は「両国民の親近感が下がっているが、互恵に基づく精神と勇気、知恵を大事にし、大所高所からみていけば問題は必ずや解決できると信じている」(記念スピーチで)
森本公誠氏は「お社の神前で仏式により慰霊の儀式ができることは画期的だ。宗教界全体がもっと頑張って、人々の心の安寧に寄与せねばならない。日中両国の問題も、交流を密にし、和やかさを作り出すことが有効であると確信している」(晩餐会の挨拶で)
元・駐中国の阿南惟茂大使夫人のバージニア史代氏は「日中韓の関係を見ると、助け合いの気持ちを持っていけるかが如何に大切かが分かる。今後も助け合いの精神を皆さんにもお願いしたい」(晩餐会の挨拶で)
また、蒋氏はシンポ終了後、「多くの聴衆が最後まで熱心に出席して、その関心の高さと熱意に感銘した。両国に横たわる問題の解決と今後の関係発展も期待できると感じた」と感想を語り、さらに「宗教者の交流が盛んになり、またこのようなシンポジウムがこれからも多く開かれることを願っている。政治家もこうした会議に参加し、一般の人々が何を考えているかを知ることが大事なのではないか」と述べた。
奈良・遣唐使ゆかりの地を訪問 シンポ講師陣
三日目にあたる5月10日には、シンポで講演や研究発表を務めた中国と日本の一行25名が、真弓常忠宮司夫妻の案内で、奈良を訪れ、ゆかりの寺院などを訪ねた。まず、東大寺では、森本長老の案内で大仏殿の盧舎那仏像を特別拝観し、つづいて、奈良国立博物館では特別展「神仏習合」で神と仏が織り成す信仰と美の世界を鑑賞。奈良ホテルで昼食の後、唐招提寺から法隆寺へ。救世観音を拝観して、シンポジウムの余韻に浸った。
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