国際連合広報局主催「第60回世界NGO年次会議」
     2007年9月5日から7日まで3日間、ニューヨーク市の国連本部では国連広報局 (DPI) 主催の第60回世界NGO年次会議が開催された。この会議は人類が直面する問題について世界の人々に問題意識をもってもらうよう情報を発信するという目的をもって協議する場となっている。

    開会式では国連広報担当事務次長の赤坂清隆氏が進行役を務め、DPI/NGO会議が国連創立2周年目から開催され、今回で60回の節目を迎え、年ごとに深まる国連とNGOの関わりを強調した。インターナショナル・シントウ・ファウンデーション(ISF)は1997年にDPIに認可されたNGOで、それ以来、毎年DPI/NGO年次会議に代表を送り、運営資金を提供し、また国際協力、開発、軍縮、人権、環境、平和構築などの分野で活動を行ない、影響力を拡大している。またDPIは国連が着手する諸問題にNGOがアクセスし、世界人々に向け国連が目指しているものを発信できるようNGOとの連携を強めている。

    今年のDPI/NGO会議におけるテーマは「Climate Change: How It Impacts Us All」つまり「異常気象:それがいかに人類に影響するか」という現代における最も切実な課題で多くのNGO団体がワークショップを開き環境問題に取り組む姿勢を見せた。

    その中でも世界の宗教が環境問題に対してどのように関わり貢献できるかというテーマはISFにとっても重要なものであり、太田垣オフィサーは宗教者が行なうできるだけ多くのレクチャーに出席した。特に印象的で影響を受けたのは「The Ethical and Spiritual Response to Climate Change(異常気象に対する道徳的、宗教的な応対)というテーマで、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教などの宗教リーダーが自らの立場から取り組む環境問題についてディスカッションをするワークショップであった。

    まず、共通してどの宗教も自然と人類との調和は世界の貧富の格差を無くすこと、そして世界の人々が繋がりの意識をもつことという意見に合致した。その意見を基盤に各宗教が具体的にいかなる取り組みをしているのか、例えば教会のメンバーで話し合いの機会を頻繁に持つことや、環境保護団体に寄付し、海や海洋生物を守る運動、そして世界人類のために祈るなどの行動を紹介した。

    質疑応答の時間には多くの積極的な質問がなされたが、あるイスラム圏出身の聴講者からの質問は興味深く印象的だった。「宗教者の考えは時には楽観的に聞こえる。自分は石油会社で働いているが神や自然を敬うばかりだと仕事を失ってしまう。その点は宗教者としてどのように考えるか。」この質問は宗教に関わる多くの人々が現代の変動期において、開発と伝統保持との間にジレンマを感じている難問である。利便性が極まった現代では、開発をくい止めることは不可能だが、これから未来を考えたとき、正しい方向への真実は我々の心にあり、心の作用を発信していくことが我々宗教者の役割であるという言葉でワークショップは締めくくられた。

    かつて、宗教は自らの信仰する宗教が正当で、それ以外は異教とする捉え方が一般であった。しかし今日、異なった信仰を持つ人々と出会い、それぞれの宗教が持つ個性を生かした連帯と協力によって様々な平和活動がなされている。この3日間のDPI/NGO会議に参加し、NGOの組織が様々な角度から積極的に環境問題に取り組んでいるということの再認識と宗教は自然を保護するという側面と、自然の恐ろしさから人々を癒すという両側面からアプローチできるのではないかということを考えさせられた。これらが行動として実現される時、宗教は環境問題へ有意義に貢献できるだろう。ISFもNGO組織として積極的に平和活動にアプローチしたいと思う。

(報告:ISF ニューヨーク・センター太田垣亘世オフィサー)