―米国におけるイスラム教徒の経験―
     2006年5月1日午後5時半から7時にかけて、国連NGO《テンプル・オブ・アンダースタンデイング》主催によるイスラム教と米国社会との関係についてのパネルデイスカッション「米国におけるイスラム教徒の経験」(”The Muslim Experience in the United States”)が、国連チャーチセンター12Fにて開催された。パネリストとして、国連開発プログラム上級政策研究顧問のアッザ・カラム女史、イスラム教公共問題評議会議長のアメッド・ユニス博士、女性イスラム教徒研究開発センター創立者で所長のヌラフ・アマテユラ女史、ニヤック平和・武装解除調停同盟議長のイブラヒム・アブデイル・ムイード・ラムゼイ氏、またモデレータには女性解放フォーラム所属の研究者でアナリストのゾラル・ハビビ女史を迎え、時事問題の渦中にあるテーマに対して、活発な議論が交わされた。
     まずカラム女史は、イスラム教徒といってもその信仰は個に帰するものであり、多様性を理解すべきであること、特に9・11以降、イスラム教徒=危険という単純化し歪曲したイメージが実情を知らない一部のメデイアなどによってもたらされた事実を指摘し、米国とイラクほか反米中東諸国のイスラム教国民は、互いの本質的な理解をしないまま先入観によって憎悪や対立を招いていることに懸念を示した。ハビビ女史は、知られることの少ないイスラム教の協調的で穏やかな側面についてふれ、アメリカ社会でイスラム教徒が弱者に対して実践している慈善活動について発言した。ラムゼイ氏は、キリスト教でもカトリックとプロテスタントでは同じ信仰とはいえ著しい相違があるように、イスラム教もその信仰の形態は千差万別であること、重要なのは相違を云々するのではなく、エイズ・戦争・環境問題など現在世界が直面している共通の課題に対し協力して立ち向かうことではないかと述べた。
     質疑応答のコーナーでは、自らもある意味での原理主義者であると語ったユニス博士は、原理主義の危険性について質した聴衆に対して、もし自分がオサマ・ビン・ラデインなどテロリストに対して論破できるとしたら、その唯一の道はコーランに拠って、彼らの所業がコーランに書かれている愛と平和の神の教えに反していることを主張するしかない、そういう意味での原理主義者なのだと語っていたのが印象的だった。イスラム教の内部にいながら、米国社会で高い評価を得ているパネリストたちが、さまざまな切り口から本音で語ったアメリカ社会とイスラム教との関係性は示唆に富み、イスラム教徒でない聴衆にとっては、その本質に触れて理解が深められる、たいへん貴重な機会となった。

ISFニューヨーク・センター, マネジャー  羽畑豊勝